GPIFによる株式パッシブ運用の実態

GPIFによる株式パッシブ運用の実態

今回は、GPIFによる株式運用、特にパッシブポートフォリオの買い付けの実態を解説します。具体的な業務手順にまで突っ込んで、考察を行っていきます。

世界有数の投資機関として知られるGPIF(年金運用独立行政法人)。近年、株式運用比率を増やすことが話題となっています。もっとも、株式の世界では「TOPIX買い」「インデックス買い」の名で、以前からその存在が知られてきました。ただ、具体的なパッシブ運用の実態にまで、深く記載されているサイトは見あたりません。

果たして、このGPIFはどのような方法で株式の運用を行っているのでしょうか。実は、同法人は公的機関であるので、まじめに情報公開を行っていたりします。そこで今回は、世間に公表されている情報を調査し、さらに運用業務の実態を把握していきたいと思います。

  1. GPIFによるパッシブ運用
  2. 公的機関として情報公開
  3. 運用と買い付けの実態考察
  4. トレードに活かすには

GPIFによるパッシブ運用

世界有数の投資機関としてしられるGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)。年金運用の投資比率を国債から国内株式に振り分けるということで、株式業界は勿論、テレビのニュースも賑わせています。しかし、その運用の具体的な手法については、なかなか知られていないのではないでしょうか。そこで今回は、その運用の実態について、事実の紹介と考察を加えていこうと思います。

まず、参考までに運用資金の規模について紹介しましょう。昨年度のGPIFの運用資金は126兆5,771億円です。さすが経済大国日本の年金を運用しているだけのことはあります。投資規模は、世界の投資機関の中でも3本の指に入ります。

運用資産の種類時価総額(億円)構成比率(%)
国内債権701,59655.43
国内株式208,46616.47
外国債券139,96111.06
外国株式197,32615.59

次に、国内株式の運用実績を紹介しましょう。昨年度、GPIFが国内株式に投じた金額は、20兆8,466億円です。まだ、本格的に株式に資金を振り向けていないとはいえ、こちらの規模も相当なものです。ソフトバンクの時価総額でも約1兆円ですから、日本有数の大企業を20社以上は買収できます。

もっとも、GPIFは上記の運用資金を全て厳選した株式に投じている訳ではありません。資金の大半は規模の大きな株式銘柄に分散投資しています。具体的には、TOPIX(東証株価指数)に採用される東証一部以上の銘柄に均等になるように分配しているようです。いわゆるパッシブ運用と言われる方法です。このパッシブ運用の投資比率が株式運用額の87.69%です。

世界有数の投資機関といえども、人員に限りある日本の役所の一つですから、株式に投入することができる人的リソースも限られています。莫大な資金を持っていても、パッシブ運用で業務を圧縮せざるを得ないのでしょう。国内株式に限らず、国債や外国株式の運用も手掛けていることですし。実際、パッシブ運用では外部の信託機関に売買の業務を丸投げしています。

公的機関として情報公開

GPIFの運用をさも詳細に知っているかのような書き方をしましたが、ここでちょっとした種明かしをしましょう。実は、前述の情報は全てGPIFのホームページに公開されています。管理人は、ここで情報を調べたに過ぎません。

管理・運用状況(年金積立金管理運用独立行政法人)

GPIFは独立行政法人、つまりは日本のお役所の一つです。公的機関は情報公開ガバナンスが敷かれていますから、それにそって行政の実態を国民に公開しなければいけない訳です。どうにもそれは、株式運用のような秘匿される傾向のある情報でも例外では内容です。運用方針や運用実績、果ては業務手順までぶっちゃけています。さすがに、保有銘柄や外部委託の運用機関の名前までは公開していませんが。

HPでは、具体的に以下の情報が公開されています。わざわざ公開情報とまで銘打って、特設ページまで設けています。

  • 運用方針
  • 運用手順
  • 運用実績
  • 購買実績
  • 信託期間への委託ルール
  • 他にマスコミ各社の記事に対する主張など

情報や運用データは、ご丁寧にもpdfファイルにまとめられています。このファイルを一通り読むと、GPIFの業務の実態が浮き彫りになってきます。

運用と買い付けの実態考察

上記のような公開情報がある訳ですが、ここでは一歩踏み込んで考察を加えていきましょう。あくまで管理人の個人的な主観に基づくものですが、良い線いっていると思います。国内株式の運用に限定して記述していきます。

パッシブ運用のポートフォリオはTOPIXそのものである

上記の結論は、過去の運用実績を見ると容易に想像がつきます。というのも、運用のベンチマークとして比較しているTOPIX(東証株価指数)との乖離がほとんどないためです。例えば、平成25年の運用実績の乖離は、たった0.49%です。

もっとも、運用している銘柄の分野を見てみると、多少、構成比率の差はあるようです(こちらのデータも公開しています)。おそらく、投入資金が大きすぎて、十分に株式の単元を揃えられなかったのでしょう。一部上場したばかりの会社だと、流動性が少なすぎて資金が大きすぎると供給が追いつきません。

そこら辺の信託銀行に運用を委託している

この点は、パッシブ運用の機関別運用実績のデータを読むと分かります。GPIFでは、運用手数料の経費削減のために、委託先を競争入札で決めています。結果、平成26年は、10の国内信託機関に運用を外部委託しています。

日本には、信託と名の付く組織は大した数がない訳で、10もの信託機関となれば必然的に信託銀行が混ざってくることが分かります。特に、競争入札制ですから、信託銀行は当然、注文を取りにいくでしょう。実際、委託先を採用する過程で56ものファンドが応募しています。

要は、みずほ信託とか三井住友信託とかの比較的身近な投資機関がパッシブ銘柄の売買業務を請け負っているのです。これらの機関は個人の投資信託の運用も手掛けています。大規模な資金といっても、業務の実態は個人と同じレベルであるいえるのではないでしょうか。もっとも、規模の原理が働くので、信託手数料は、個人契約のそれよりも良い条件で契約していることでしょう。

ちなみに、前述の2行は、過去3年の運用実績に公開データがあるので、委託先としてGPIFと取引のあった事実が確定しています。他の信託銀行に関しては、未確定です。

急な買い付けや相場を見ての売買は無理である

世の中的には、GPIFが海外の売りに対抗したとか、日経平均が下がるとGPIFが買い付けてくるとかの噂が流れています。GPIF的にはそのような意図があるかも知れません。ただ、相場を見てのリアルトレードは無理でしょう。

なぜなら、信託機関に運用を外部委託しているためです。それも大規模な資金を預けています。運用指図は行っているようですが、電話一本で済ませている訳ではないでしょう。組織対組織の業務というのは、そんなに迅速で簡単に済むものではありません。

信託機関には少なくとも、前日、おそらくは2、3日前に運用指図が届いているはずです。それも、情報媒体は記録が残る文書でしょう。準備と管理の手間を考えれば、「GPIFが突然買ってきた」という噂には合理性がないことが分かります。運用指図か買い付け条件が前もって提示されていたのでしょう。無理無理な場面でTOPIX買いが行われている実態も、考察を後押しする材料です。

意外と外国人投資家の動向を気にしている

GPIFの投資アドバイザーに、海外のシンクタンクが名を連ねていることから推測することができます。ソースとなる事実は、購買実績のファイルに記載されています。GPIFは日本市場の投資環境を客観的に把握しようと努めている姿勢が見てとれます。

株式市場というのは、売り手がいなければ売買が成立しません。逆もまた然りです。GPIFのような巨人が取引を行うためには、それに応じる巨人がやはり必要なのでしょう。GPIFの資金規模に応ずることができるのは、アベノミクスで参加を始めた海外投資家の集団しかいません。大局的には、GPIF対海外投資家という構図ができています。

以上のことから、GPIFは海外投資家の動向を相当に考慮していると考えます。

トレードに活かすには

以上のように、GPIFが公開しているデータから、その実態について考察を行っていきました。では、どのようにすれば株式取引の知恵とすることができるのでしょう。最後に、トレードに活かすヒントを考えていきましょう。

1つ目は、素直にTOPIX指数の先物を買う方法です。巨人であるGPIFが国内株式を買い増す限りは指数が右肩上がりに推移すると腹に決め、投信やオプションを保有する方法です。腹が決まれば、暴落相場も押し目買いのチャンスです。

ポイントはGPIFが運用方針を公開している点です。運用方針に変更があれば、そのときもやはり情報公開をせざるを得ないのです。変化がないことを横目で確認しながら、指数オプションを仕込んでは売るを繰り返してもよいでしょう。

ただ、投信や指数オプションを取引するには、100万単位の資金が必要です。この点、低資金で運用したいのなら、CFD取引を利用するのもひとつの手段です。10万円の規模から売買が可能です。取り扱い業者としては、IGマーケッツ証券が有名でしょうか。

2つ目は、冒頭に触れたTOPIX買いに乗じることです。具体的には、新規にTOPIX指数に組み込まれる銘柄を仕込んでおき、GPIFがパッシブ運用で買い付けてくるタイミングを狙う手法です。俗に、「小判ザメ投資法」と呼ばれています。

TOPIX買いで小判ザメ投資法

上記の手法については、本ブログでも色々と豆知識や取引日記を公開しているので、読んでみてください。「TOPIX買い」のタグで分類しています。

最後に3つ目は、GPIFのアクティブ運用に着目する方法です。本記事ではパッシブ運用ばかりを紹介しましたが、その裏でアクティブ運用も手掛けている事実があります。このアクティブ運用のポートフォリオに組み込まれているであろう銘柄を狙い、保有するのです。

アクティブ運用している銘柄をどのように見極めるか。これもまた、GPIFのHPを隅から隅まで読み込んでいくと、想像がついてきます。詳細については、また別途、記事にしていきましょうか。

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