現物株や投資信託を担保に信用取引を行う二段階信用の方法と信用余力の計算の考え方、そしてリスクと保有現物株に向く銘柄の考え方を解説します。

信用取引では、一定の証拠金を預けることで、その3倍弱の金額を株式の売買を行うことができます。現物株と信用取引を組み合わせると、さらにレバレッジを引き上げることが可能です。二段階信用を使ったやり方です。ここでは、二段階信用を行った場合の信用余力の計算とリスクについて解説します。担保としやすい現物株の銘柄選定や仕込みの時期、指数先物への応用についても語ります。

  1. 現物株を担保にした信用取引
  2. 有価代用証券に向く銘柄は
  3. 先物インデックスやFXへの応用

現物株を担保にした信用取引

市場のセンチメントが絶好調なときや、全力で買いに臨みたいと考えたときに、しばしば信用取引の買い付け余力を上げたいと考える場合があります。しかし、信用取引で売買できる建て玉の総額に対して、その30%の保証金が必要です。信用取引の最大レバレッジは3.3倍までしか掛けることができない訳です。

預け入れ保証金を増やさなくとも買い付け余力を増やす方法があります。現物株を担保にする方法です。現物株や投資信託は「有価代用証券」といって、その市場価格の一部を信用取引の保証金に充てることができます。これを利用すると、現物株との併せ技で目一杯までレバレッジを引き上げることができます。

二段階信用を使った場合の信用余力

二段階信用を使った場合の信用余力

上の図は、信用余力を棒グラフを使って示したものです。ご覧の通り、保有する銘柄の一部を現物株にすることで、見かけ上のレバレッジを上げることができます。現物株を踏み台にして、さらに信用建て玉を積み上げるという訳で、「二段階信用」と呼ばれています。

実際問題として、現物とはいっても株式はリスク資産です。株式の評価額全額が保証金に割り当てられる訳ではありません。特定比率の掛け目(ほどんどの場合80%)が乗算された金額が割り当てられます。時価100万円の現物株なら、80万円が信用取引の保証金に計上されるいう訳です。100万円の現物株を保有していれば、およそ260万円(80万円×3.3倍)の新規建て余力が生まれます。

具体的な計算方法は、以下の記事も参考にしてみてください。

参考記事:信用取引・信用建て余力の計算方法

有価代用証券に向く銘柄は

実際問題として、現物株を担保に信用取引を行う方法はリスクヘッジの考え方が求められます。というのも、現物株の評価額が下がると、それを元に割り出される信用余力の金額も減ってしまうからです。つまりは、特定の銘柄だけに集中して二段階信用を行うと、ハイリスクハイリターンの取引になってしまう訳です。現物株と信用取引で同じ銘柄に全力投資をする手段は、よほどのことがない限り好ましくありません。

担保とする現物株の銘柄や投資分野を検討することで、ある程度のリスクヘッジができます。例えば、長期保有を前提にした配当取りの銘柄や株主優待銘柄です。これらの銘柄は権利日が近づくに釣れて、緩やかに上昇する傾向があります。権利落ちとなると株価は下落する傾向もありますが、それもまた予想が建てられるので、あらかじめリスクを減らしておくことができます。

参考記事:株主優待のアノマリーを利用して高勝率

長期保有を前提として現物株を持つ場合、仕込みの時期も重要です。ごくおおまかな傾向ですが、日本の株式というのは以下のようなスパンで価格が推移しています。

一年間の株価の大まかな動き

一年間の株価の大まかな動き

株式は「春に売って秋に買え」ということで、年単位で株式を保有することを考えた場合、6月頃からが頃合いと考えます。一方の信用売買は短期トレードを前提とすれば、5月の売り仕掛けや1月のご祝儀相場が一年の要所でしょうか。この頃に2段階信用が活躍しやすいとも言えます。

ちなみに、NISAを利用されている方は、NISA口座で保有している現物株を活用したいと言いたい所ですが、残念ながら現在の所、有価代用証券に当てることはできません。投資への間口を広げることが目的の制度ですので、リスクを上げる玄人向けの方法は当局が好まないのでしょう。

先物インデックスやFXへの応用

ここまでの説明では、現物株で信用取引を行う方法を説明しました。実は、証券会社によっては、現物株を担保として、先物インデックスやFX(外為取引)の証拠金に割り当てることができます。

例えば、SBI証券では「FX取引 株券担保サービス」という名称でサービスを提供しています。SBI証券は、株式取引と外為取引の両方を扱っているので、このようなハイブリッドなサービスを提供できるのでしょう。これを利用すると、円安効果の高い輸出メーカーの現物株を保有しながら、さらにFXでドル円を買って円安を期待するという尖った取引が可能です。

株ドットコム証券や松井証券では、さらに株価指数先物やオプション取引の保証金への適用も可能です。現物株を担保にして、日経225先物やプット・コールオプションを売買できる訳です。これを利用すると、TOPIX内需銘柄を持ちながら、日経225を売って鞘を取ったり、相場のセンチメントが悪いときにプットオプションでリスクヘッジを行ったりと、また別の使い方が見えてきます。

各証券会社のサービス対応は以下の通りになっています。こういった取引のノウハウのために証券口座を持つのも、また一つの選び方です。

証券会社SBI証券カブドットコム証券松井証券楽天証券ほか
代用有価証券現物株式投資信託現物株式投資信託現物株式投資信託現物株式投資信託
信用取引××
指数先物・オプション×××××
FX(外為取引)×××××

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