東証一部上場といえば、鉄板の買い材料です。そんなニュースを期待して、一部昇格銘柄を予想する方も多いことでしょう。
ここでは、東証一部昇格を予想するために必要不可欠の条件=東証一部指定条件を具体的に解説したいと思います。条件は基本的に財務状況・株主状況に関係します。四季報を手元に用意しましょう。
記事の内容は以下の通りです。
- 東証一部指定の条件
- 昇格条件クリアの可能性
- あとは経営陣のやる気次第
東証一部指定の条件
結論から書きましょう。東証一部指定の条件は、実はこちらの東証HPで公開されています。以下はその内容を転載したものです。
- 株主数(指定時見込み) 2,200人以上
- 流通株式等(指定時見込み)
- 流通株式数 2万単位以上
- 流通株式時価総額 20億円以上
- 流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上
- 売買高 申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位以上
- 時価総額(指定時見込み) 40億円以上
- 純資産の額(指定時見込み) 連結純資産の額が10億円以上
- (かつ単体純資産の額が負でないこと)
- 利益の額又は時価総額
(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)
次のa又はbのいずれかに適合すること
- 最近2年間の経常利益の合計5億円以上
- 時価総額が500億円以上
(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)- 虚偽記載又は不適正意見等
- 最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
- 最近5年間「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
- 次の(a)及び(b)に該当するものでないこと
- (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載
- (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載
と、まあ書いてみた訳ですが、これだけを読んでも難しい所です。それに、全ての銘柄当てはめて、いちいち判断するなんてことしてられません(※)。
そこで、次章ではもっと簡単な判定方法をご紹介します。これを使えば、少なくとも候補としている銘柄が昇格可能か否かの判断はつくはずです。
※後日追記:CD-ROM版の四季報を利用すると、全ての銘柄から昇格候補をスクリーニングに掛けることが可能です。本記事を一通り読んでから見た方が理解が進むと思いますので、記事の末尾にリンクを追加しました。
昇格する可能性の簡易的な予想方法
前述の通り東証一部指定の条件が決まっている訳ですが、いざ昇格銘柄を予想するとなると、若干勝手が変わってきます。全銘柄を調べると大変な時間と労力がかかるのです。そこで、ここでは簡易的に昇格候補となる銘柄の判定方法を紹介してきましょう。冒頭の昇格条件を噛み砕きながら説明していきます。
以下の内容がポイントです。
- 株主数が2200人以上
- 総資産額が40億以上
- 黒字額が2年で5億円以上
- 株式の流動性が2万単位以上
- 他に経営方針等
- 株主数で判定する
- ポイント:株主数2200人以上
東証一部昇格銘柄を予想する上で、最初のフィルターになるのが株主数です。
東証一部指定の条件には、株主数2200人以上という基準が設けられています。したがって、これ以下の株主しかいない場合は、候補の対象から外れます。
しかし一つ例外があります。株主の増加です。具体的には、立会外分売や株主優待新設がトリガーです。これらのイベントにより、株主数の基準をクリアする可能性が出てきます。
むしろ、対象銘柄の企業がこれらのアクションを取るようなら、一部昇格を狙っていると見てよいでしょう。前記のイベントは要チェックです。
- 総資産額で判断する
- ポイント:総資産が40億円以上である
同じく一部指定の条件として、会社総資産の金額が40億円以上あることが必要です。この基準下回る企業は、予想の対象から外れます。
前述の株主数の基準をクリアしていても、判定基準を下回る企業は多々あります。主に、マザーズ市場の人気先行銘柄によく見られます。会社規模が小さくても将来性がある企業は面白いのですが、そのような銘柄は一部指定に成長するまで年月を要します。
- 経常利益で判断する
- ポイント:2年連続で黒字。経常利益が合わせて5億以上。
同じく、黒字が2年以上続き、かつ合わせて5億円以上ある必要があります。ここで言う黒字とは、財務諸表の経常利益の金額がプラスであることを指します。
人気があっても、赤字では東証一部に昇格できません。そのような例は、研究開発系のベンチャー企業に多く見られます(例えばユーグレナ等)。
決算発表と同時に黒字基準額をクリアするようなら、要チェックです。
- 株式の流動性で判断する
難しい話ですが、株式の流動性という条件もあります。これは、浮動株の数量で表されます。流通株式等(指定時見込み)が2万単位以上であることが必要です。
もっとも、浮動株の量をリアルタイムで把握することは、現実的に不可能です。また、この条件は厳密に適用されることが少ないので、あまり当てになりません。そこで、株式流動性の観点で、消去法的に予想から外す判断基準をご紹介しましょう。
昇格予想から外すケースとしては、特定株主の比率が高い場合です。具体的には、オーナー企業や親族経営の企業で、特定株主に同じ名字ばかり並んでいる場合は流動性が低いことが多々あります。このような銘柄は、一部昇格の可能性がないものと判断します。逆に、立会外分売などの株式流動性を上げるようなアクションを取ってくるようなら、チャンスとなる可能性が生まれます。
- その他候補から外す材料
他にも、企業が一部昇格は狙っていないと思われる材料がいくつかあります。リストラ策や長年の東証2部残留などです。
東証一部昇格には、相応のコストがかかります。この点、企業にとっては採算の悪化につながります。条件をクリアしていても、すべての企業が一部昇格を狙っているとは限りません。
前述の材料を持つ場合は、言わば「一部昇格を狙う余裕のない企業」「一部昇格を諦めてしまっている銘柄」であることを示しています。経営が攻めに転じるまで時期を待ちましょう。ネガティブな材料は、決算資料等を見ると書いてあることがあります。
あとは経営陣のやる気次第
以上の通り、東証一部昇格の条件と判定方法をご紹介しました。基本的には、いくつか候補を定め、そこにフィルターを掛けて絞り込んでいくという作業が必要になります。
後日追記:全ての銘柄から昇格候補をスクリーニングする方法を別途、記事に上げました。→参考記事:四季報CD-ROMで東証一部昇格銘柄をスクリーニング
有望な銘柄であっても、最終的に一部昇格を狙うか否かは、企業経営層の判断にかかっています。この点、マザーズ市場の銘柄は野心的であるので、やる気には事欠かないと言えるでしょう。逆に、東証2部や地方取引市場に長く居座っている企業は怪しいところです。
東証一部昇格を予想するには、究極的には経営層のやる気を推し量る必要があります。この点、具体的なアクション、置かれた状況などが判断材料になります。これらのヒントについては、別の記事でご紹介したいと思います。
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