このページでは、株主優待銘柄の権利日に連れて株価が上がる現象と、その裏で損を被る人たちの存在について語りたいと思います。株式相場には直接関係のない、管理人の一考察です。
株主優待と言えば、一般の投資家が特定の銘柄に興味を抱くひとつの理由です。実際、多くの優待銘柄は権利日が近づくに連れて、株価が上がる傾向があります。ただ、株式の世界というのは、誰かが得をすれば、どこかで損が生じる世界です。果たして、株主優待銘柄というのは、誰が損を被っているのでしょう。
今回は、株主優待にまつわる不思議。利益の配分先について解説をしていきます。
- 株主優待銘柄のアノマリー
- 株式相場は利益と損失が平等な世界
- 優待銘柄に参加する投資家の種類
- その株主優待に価値はあるか
株主優待銘柄のアノマリー
始めに、株主優待の概要と株主優待のアノマリーについて、説明をしましょう。市場に出回る上場企業の株式は特定の日に保有していると、企業から贈答品がもらえる銘柄があります。いわゆる「優待銘柄」です。企業側は、株主数や売買出来高、知名度の向上を見込んで、このような施策を採っています。
一般の投資家の方でも、この株主優待は魅力的です。何しろ、理屈の上では「株式を保有している」だけでプレゼントがもらえるのですから。実際問題、駆け出しの個人投資家の中には、(良いか悪いかは別にして)株主優待を目当てに投資を始めた人も少なくありません。
少し投資の腕が上がると、こういった優待銘柄が権利日に駆けて株価上昇することに気付きます。いわゆる「株主優待のアノマリー」と呼ばれる現象です。この上昇率はなかなか馬鹿にできないもので、人気の株主優待がある銘柄では、上昇が始まってから2~3割程度の株価上昇を見込むことができます。
参考記事:株主優待のアノマリーを利用して高勝率
一方で、材料がなくなれば、株式というモノは売られる訳です。権利日を過ぎると下落を始める優待銘柄は少なくありません。権利落ち後も株価上昇が続けば話は単純なのですが、ほとんどのケースでは株価は下落を始めます。この株価下落をヘッジする方法が空売りによる両建てです。「つなぎ売り」とか「株主優待タダ取り」とか呼ばれます。
参考記事:両建てで株主優待のタダ取り
株式相場は利益と損失が平等な世界
前述の通り、株主優待がある銘柄は人気がある一方で、下落するタイミングもあることを述べました。ここで、一つの疑問が生まれます。それは「果たして、誰が損をしているか?」という問題です。
優待銘柄は権利日を過ぎると下落する傾向にあります。逆に言えば、権利日までは株価が上がり続ける訳で、上がるためには高値で買う人がいなければなりません。要は、誰が高値掴みをして、結局損を出しているのかという話に繋がります。
合理的に考えれば、株価が下落を始めれば損切りを行うのがセオリーです。ただ、人の本質というのは欲深いもので、まだまだ上がると思いたい、信じたい人もいるのでしょう。こうした人物が損を出し、管理人や読者の方に利益をもたらしてくれる訳です。
株式の世界というのは、大体にしてゼロサムゲームです。0からお金が生まれることはありません。誰かが得をすれば、誰かが損をする世界です。その損失は、企業が提供する株主優待のプレゼント費用だけでは賄うことができません。
優待銘柄に参加する投資家の種類
需要の面から、損をしてくれる人を調べてみましょう。優待銘柄の売買に参加する人は、以下のタイプに分類できます。
- 優待以外の理由で長期で持つ人
- 権利日間際に飛びつく人
- 予め仕込んでおき権利日間際に売り抜ける人
- 両建てをしてヘッジする人
こうして見ると、大体にして参加者は個人投資家であることが見て取れます。一部の銘柄では、機関投資家が参加している優待銘柄もありますが、それはレアケースです。ほとんどの参加者は脇の甘い初心者投資家の方々だと思ってよいでしょう。優待狙いのアノマリーで高勝率を上げることができる理由も頷けます。
結論を言ってしまうと、損を被ってくれる人は1と2の方々です。厳密には、長期保有の投資家は未来の利益確定のタイミングまでトータルで損か得かはわからないのですが、権利日を過ぎると株価は下落しますから、実質的な利益を削られていることには変わりありません。2番の方は、まあ、まず損をしていると思っていいでしょう。せいぜい、権利日下落後のヤレヤレ売りのタイミングで手放すのが関の山です。
4番の方は、多少は知恵が回る方です。ただ、アベノミクス以降は空売りが増えすぎて、多くの銘柄で逆日歩が発生しています。回数を重ねる度委に、逆日歩で損失を出していることでしょう。管理人の推奨する取引手法は3番です。どんな良い優待品でも、権利日の株価下落分を補う内容のものはなかなかありません。
その株主優待に価値はあるか
最後に管理人からの意見(問いかけ)です。あなたが保有している優待銘柄。その株主優待に価値はありますか?
結構、単純な話で、以下の不等式が成り立つ限り、権利日を跨いでまで保有を続けて得をできる優待銘柄というのは、さほど多くはありません。株価下落を見て見ぬ振りするなら、そのお金で自分で買えばいいじゃないという話です。よーく式を見てください。
「優待品の市場価格>権利落ちによる株価下落」でない限り優待狙いは損
唯一、例外があるとすれば、奥さんに言い訳するために優待を狙う恐妻家の旦那さんがあるかも知れません。管理人も結婚してから、ちょっとその心理が分かります。優待銘柄で家族サービス。家族に株式売買を認めてもらう、ひとつの手段であることでしょう。もしかしたら、優待銘柄で損を出しているのは、日本の善良なお父さんなのかも知れません。
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