トランプ新大統領の就任後100日計画を解釈

トランプ大統領の政策まとめ

2017年1月20日にトランプ氏が米国の新大統領に就任します。就任に先立ち、同氏は年明け早々から政策計画をtwitter上で公表しました。通称「100日計画」と呼ばれる新政権の行動計画です。今後の株価を占う上で具体的内容を把握せずにはいられません。

大統領選挙で勝利の後は「以外とまとも」という評価を得た同氏。新政権への期待から米国株、日本株共にトランプラリーと称される株高を実現しました。果たして、新政権の誕生後も市場の期待を裏切らずに株高維持を続けることは可能なのでしょうか。

今回は、トランプ大統領の政策計画を解説していこうと思います。

  1. 100日計画をtwitterで公表
  2. 政策計画の具体的内容
  3. 政策の解釈と市場へのインパクト
    • TPP離脱
    • エネルギー規制・環境保護法の撤廃
    • サイバー攻撃への対策
    • 移民規制の強化
    • 金融規制の緩和
  4. 日本株への影響は
    • 貿易保護について
    • ドル高牽制について

100日計画をtwitterで公表

最初にトランプ新大統領が政策計画を公表した経緯から。同氏はtwitter上で色々と物議を醸す発言をすることで知られています。今回の政策計画もその一例で、年始早々からtwitter上で政策の具体案を語りました。時代の流れと言いますか、こうした取り組みをする首脳は世界的に見ても非常に稀なのではないでしょうか。

トランプ氏のtwitterアカウント

同氏が公表したのは就任後100日間の行動計画(通称「100日計画」)です。この行動計画には、TPP離脱を含むいくつかの具体的な政策計画が含まれています。米国の政策動向を読み解くために、この100日計画を解釈しようというのが今回の主旨です。

政策計画の具体的内容

今回発表された政策計画の内容は選挙活動中から公言していたもので、従来路線を裏切らない内容となっています。それもそのはず。100日計画の公表に当たり、新政権は国民の一部にアンケートを取っていたことが知られています。ワンマンかと思いきや、意外に民主的・ビジネスライクな方法を取っていることは、同氏の今後の動向を探る上でプラスに働くかも知れません。

それはさておき、今回の発表に含まれる政策を列挙すると以下の通りになります。

  • TPP離脱
  • エネルギー規制・環境保護法の撤廃
  • サイバー攻撃への対策
  • 移民規制の強化
  • 金融規制の緩和

一方では、インフラ・公共事業への投資や税制の改正、医療保険制度(オバマケア)の改正は含まれていません。これらの政策には期間を要するため就任当初の行動計画からは外された、というのが市場の評価です。

政策の解釈と市場へのインパクト

各政策毎に内容を解説していきましょう。背景にある事象と予想される効果を考えていきましょう。以下に、ざっくりとした因果関係を示します。

TPP離脱

日本で懸念されていた米国のTPP離脱方針は早々に実行されるようです。背景にあるのは、トランプ氏が掲げる「アメリカファースト」の思想であり、貿易を巡る米国の強固な姿勢が伺えます。

誤解しがちな点は、TPP離脱ではあるけれども各国との貿易協定交渉は継続する点です。諸外国に対しての個別交渉、いわゆる二国間協定に変更する訳です。TPP協定の枠組みで交渉しても米国はいくつかある加盟国の一つに過ぎません。米国の発言力を最大限に生かすためには、個別交渉の方が有利に働くという訳ですね。

エネルギー規制・環境保護法の撤廃

トランプ氏は環境破壊・温暖化のメカニズムに対して懐疑派のスタンスを取っています。そもそもが米国という所は環境保護に消極的な国です。ある意味当然とも言えましょう。少なくとも、環境保護の技術(例えば自動車の排ガス抑制)は、日本・欧州に出遅れています。米国産業の弱みをカバーする政策であると考えれば、納得がいく政策です。

付け加えると、米国はシェールガス革命でエネルギー資源の産出量を増やすことに成功しました。エネルギー規制の撤廃は、簡単に言って資源の消費を増やす効果が見込めます。エネルギー消費が増えればシェールガスの需要も増える訳で、やはり米国の産業保護的な側面が強い政策であると考えて良さそうです。

サイバー攻撃への対策

背景にあるのは、中国からのサイバー攻撃に対する企業の不満でしょう。同じハッキング攻撃であればロシアからの攻撃もあるでしょうが、トランプ氏はロシアの関与に対しては否定的なスタンスを取っています。ここら辺のスタンス違いは、同氏の外交姿勢と一致します。トランプ氏は、反中国的な姿勢・親ロシア的な姿勢をいくつかの場面で見せて来ています。

産業的にはIT業界の需要を下支えする効果がありそうです。「下支え」という表現に納めたのは、米国IT業界にとっては現在の金融政策がマイナス方向に進んでいるためです。ご存じの通り、米国は利上げの局面に立っています。あまり知られていませんが、IT業界の株価は金利の上昇・下落に反応しやすい傾向があります。IT企業のような資産をあまり持たない企業では、キャッシュの調達が容易であることが成長への要件であるためです。貸出金利も上がる金融引き締めの局面は、基本的にIT業界にとって向かい風になります。

移民規制の強化

トランプ氏は移民に対する強いバッシングの姿勢を崩していません。背景にあるのは、米国国民の反移民感情です。トランプ氏の支持者と考えられている中間所得層の意向を反映した政策であると考えれば納得がいきます。彼らが考える問題が本当に移民を原因とするものなのかという事実の検証はさておき、就労ビザの取得を含む米国での就業は従来より困難になると考えれられます。

表面上の影響としては、雇用率の数字を押し上げる効果を生むと考えます。本質的な就業希望者が減るためです。従来では、不法移民を含む非正規の移民も数字に表れない形で就業希望者として存在しました。それゆえ、不法移民の数が減れば本質的な労働者の供給が減ります。

結果として、分母となる就業希望者の数が減ることになるので雇用統計の数字が上向くという寸法です。さらに言えば、正規の就業希望者は相応の労働対価を求める層ですから、賃金水準も上向くことが予想されます。ただし、飽くまで表面上の数字の問題であって、本質的な雇用環境が改善するか否かとは別の話です。FRBが利上げを検討する際、数字をどのように解釈するのかという疑問が付いて回ることも考慮しておくべきと考えます。

金融規制の緩和

米国の金融規制法と言えば、ドット・フランク法とボルカールールです。これらの法律はリーマンショックの後に、金融業の過剰なレバレッジを抑制するために制定されました。ただ、近年ではディーラーをルールでがんじがらめにする法律であると、マイナス面が強調されるようにもなっていました。

こうした背景を考えれば、金融規制の緩和は当然の株高を演出することが期待されます。実際、100日ルールが公表された後、米国ダウは史上最高額の20,000ドルの節目を試す展開となりました。

日本株への影響は

日本株の傾向として、米国株が上がると連れ高する傾向があります。基本的には、以上で述べたトランプ新政権の行動計画は日本株にとってもプラスに働くものと解釈して良さそうです。米国の好景気は常に日本の株価を押し上げてきました。ベースとして、日本株の見通しは明るいと見て良いと考えます。

ただ、節目節目では株安への影響も生じることでしょう。特に懸念点として頭に入れておきたいのは、トランプ氏の持つ貿易保護主義的な思想とドル高に対する姿勢です。

貿易保護について

貿易保護主義の思想については、先日発せられたトヨタのメキシコ工場に対する課税発言が典型的な例です。メキシコ工場から米国に輸出される自動車の関税を引き上げるとの発言をし、トヨタの株価が一時下落する事態となりました。

実際にはメキシコから米国への輸出はトヨタの計画になく、株価水準は元に戻した訳ですが、今後もこうしたことはちょくちょく起きると考えます。ただ、ニュースリテラシーがあれば、良い押し目を作ってくれるとの期待も持てます。

ドル高牽制について

もう一つのドル高も保護主義思想を背景とした懸念事項です。既に米ドルは割高な水準にあり、米国の輸出業にとって足枷です。企業保護を考えれば、いつ何時、ドル高牽制の発言が出ても不思議ではなく注意が必要です。

ご存じの通り、日本株はドル円レートを意識した値動きをしていますから、ドルの動向は重要です。当面は口先介入で良い押し目となるでしょうが、本格的に政策に盛り込むようになれば下落トレンドを考えなければなりません。

いずれの場合も、トランプ氏の発言に対する事実の見極めが重要となりそうです。選挙前・選挙後を見ての通り、同氏は過激な発言をする割には、本音をあまり話さないタイプの政治家であるようです。今回の記事でも示した通り、後で振り返ると理路整然と説明が利くのですが、当面では非常識・不可解とも思える発言が飛び出すことが多々あります。

トランプ氏の発言に振り回されないためには、ニュースの内容と影響を的確に捉える高いリテラシーが必要であると考えます。2017年の相場観を醸成するためにはニュースを解釈するトレードスキルが重要だと思う次第です。そんな訳で、興味のある方は以下の書籍をご参考までに。

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コメント

    • kei
    • 2017年 1月 10日

    素晴らしい記事です。勉強になりました。ありがとうございます。

      • 管理人
      • 2017年 1月 11日

      お役に立てて幸いです。

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