
今回は、企業の決算が上方修正された場合に買いを入れる手法を解説します。
企業決算は良い場合、株価が上がります。しかし、現在の株価が割高であると、かえって株価が下がるケースもあります。「材料出尽くし」です。そこで、ここでは予想PERの指標を使って、上方修正された財務データから目標株価を割り出す計算を行います。
- 企業決算の上方修正とは
- 企業決算と売買判断
- PERを使った売買判断
- 3月、9月の決算月を狙う
- まとめ
企業決算の上方修正とは
みなさんは、企業決算を意識して株式売買をしていますか?
多くの場合、企業の決算発表には株価の乱高下が付き物で、なかなか相場に入りにくい状況があります。決算発表後の後追い買いを入れてもよいのですが、財務データの分析に苦労します。また、株価の割高感を見逃し、高値掴みをすることもままあります。ひとえに、決算データの判断は難しいというイメージが付きまといます。
そんな判断の難しい決算発表の相場でも、容易な判断で利益が出るケースがあります。利益の上方修正です。
決算発表以前の株価というのは、大まかに言って、それまでの経常利益に準じて定まります。特別に利益の高い年であれば、その年の株価は高騰します。逆に利益が低い年は、株価が低迷します。
では、新たに決算発表を打ち出したばかりの株価はどうなるでしょう?発表されたばかりの決算利益は、まだ株価に織り込まれていません。ということは、利益の上積みがあれば、その後、株価が上がる見込みがある訳です。これを見込んで、上方修正決算があると、直ちにこれを株価に組み込む動きが働きます。
今回は、この上方修正が発表された場合に買いを入れる手法を解説します。さらに、予想PERの指標を使って、上方修正された財務データから目標株価を割り出す計算を行います。
決算データ修正による株価上昇
繰り返しになりますが、株価というのは企業の利益に比例します。その倍率は、企業の発行株式数や規模、人気度によって異なります。後述しますが、PERという指標を使うと、これらのデータを使って株価を割り出すことができます。
手法の詳細を説明する前に、まず読者の方には下地になる知識として「利益と株価の比例関係」のイメージを持ってもらいたいと思います。以下は、利益と総資産、そして株価の関係を図で示したものです。
株価というのは、会社の総資産を発行株式数で等分したものです。黒字の企業であれば、その総資産は「経常利益×α」でおおまかに計算することができます。この係数αはその企業独自の係数です。主に企業の人気度に依存しています。企業の人気度というものは一定の変動がありながらも、規模の大きい企業ほど係数αは長期的には安定して推移する傾向があります。
さて、次は利益の上方修正が加わったときのイメージです。
ご覧の通り、経常利益に修正が加わった分だけ、株価も上昇します。特に、決算前後で人気度αは衰えることはありません。むしろ上方修正が好感されてさらに倍率が上がることもあります。いずれにせよ、株価に利益修正分の上乗せが加わります。
この株価の上乗せ分を狙うことが、今回の手法のキモとなります。当然ながら、上乗せが大きい分だけ、利益も大きくなります。
PERを使った売買判断
企業の決算発表を確認したとき、どのようなデータを使って株価の上昇を予想すればよいのでしょうか?
その答えの一つがPERです。PERは株価の割安感を示す指標です。このPERを使うと、企業決算の上方修正があったときに、目標株価を割り出すことができます。ここでは、その計算方法を解説します。
例えば、以下はミマキエンジニアリングが2013年9月に決算の上方修正を行ったときの計算です。
経常利益 | PER | 理論株価 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
2013年上期 | 700百万円(※1) | 15(※2) | 754円 | ※1四季報による ※2おおよその推移 |
下期上方修正後 | 1000百万円 | 15 | 1077円(※3) | ※発表後にもPERは変わらないとして |
決算発表前のPERを計算してみると、おおよそPER=15という数字が出ました。この数字が長期的に見て、変わらないことを前提に計算をしてみました。上方修正の前後でPERが変わらないという仮定に準じて計算すると、上記の表のように目標株価を割り出すことができます。
実際の所、ミマキエンジニアリングは立ち会い外分売で一旦株価が下がりながらも、このイベントをこなした後に元のPERに復帰しました。長期的に見て、PERが一定であり、下落時はむしろ押し目買いのチャンスであった訳です。
さらに大きなポイントは利益の上方修正です。上方修正された利益の金額が大きく、PERの計算結果が一時的に大幅安となる状況が生じました。利益を基準に株価を割り出すと、利益が押し上げられた分だけ、株価が割安となった訳です。結果、割安感の解消に向けて株価が動き出しました。実は、決算発表後にストップ高となっています。
3月、9月の決算月を狙う
最後に、この手法を使う時期と銘柄の解説です。
まず、この手法に準じて買いを仕込むチャンスは、決算発表の直後です。特に、3月、9月にチャンスが巡ってきます。3月、9月には多くの企業の半期決算があります。四半期決算が普及した現在でも、両者がいわゆる「決算月」と呼ばれています。株式取引において、この企業決算は大きなイベントになります。
同じく、狙うべき銘柄は成長性の高い企業です。順調に毎年黒字を重ねている企業か、なにかしらの要因で利益増を見込むことができる銘柄がよいでしょう。この選定基準だけでも勝率は上がりますが、さらにPERで絞ることでお宝銘柄を発掘することができます。
決算が発表される前から、銘柄の選定はしておきましょう。上方修正の材料がある企業を探しておく訳です。輸出企業と円安、小売・飲食業と店舗拡大、IT企業と新規顧客獲得などが良い相性の例です。
まとめ
この取引手法の手順をまとめます。
決算月に入ったら、まず決算発表の日時の確認です。日程は、Yahooファイナンス等で確認できます。あらかじめ銘柄を絞り込んでおきましょう。
発表の日時となったら、企業のIR情報を確認します。決算結果が発表されているはずです。
いざ、決算が発表されたら、目標株価の計算です。お祭りになるかお通夜になるか?株価の伸び代を計算しましょう。PERの数字を使って、計算を行います。
計算方法はこちら。参考記事:株式PERの計算と利用方法
この手法を使えば、決算発表後の株価の伸び代が計算できます。伸び代が大きければ、買い。微妙なようなら見逃し。これらの判断ができます。
という訳で、企業決算情報修正の買い手法ご紹介でした。今回のこの手法をあらかじめ知っておけば、波乱の企業決算も意を決して、買いにいくことができます。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。