このところ(2014年8月現在)、株価上昇が続いているビックカメラ(3048)。ここで、さらに株価が上昇する要因が生まれました。空売りポジションの増加です。信用残が増えすぎていて、逆日歩が発生しています。逆日歩の発生=支払い金利の増加ですから、積上げられた空売りポジションが近いうちに解消されるはずです。
このページでは、ビックカメラを例に、株主優待のタダ取りで生まれ空売りポジションを踏み上げる手法をご紹介します。「空売りと逆日歩」「株主優待のタダ取り手法」の知識を応用します。
- ビックカメラの株価推移
- ビックカメラの売り残膨らむ
- 両建てポジションを踏み倒す
- 人気の株主優待は高く付く
ビックカメラの株価推移
今回の事例は、ビックカメラ(3048)です。最初に、株価の推移を見ていきましょう。この記事を書いている今日(2014.8.3)の時点で、ビックカメラの株価は下記チャートの通りになっています。
株価は5月頃から上昇を続けてきました。理由は、明白です。株主優待狙いの個人投資家が多いのです。ビックカメラは、8月末に株主優待の権利日を控えています。例年、人気の銘柄です。
この上昇トレンドを狙う方法も別にあります。下記記事にて紹介した「株主優待銘柄のアノマリー」を使った手法です。
上記の記事に書いてある通り、株主優待銘柄のアノマリーを使う手法では、「株主優待権利日の1ヶ月ほど前」が利益確定のタイミングです。なぜなら、優待銘柄は株主優待のタダ取りを狙う投資家が両建て(空売りを行って差益リスクを消す)を仕掛けてくるからです。結果、多くの優待銘柄の株価は、権利日のおよそ1ヶ月前あたりにピークを迎える傾向にあります。
上記の手法に準じれば、ビックカメラは既に旬を過ぎたはずの銘柄です。ところが、今年の(今年も!?)ビックカメラは、さらに株価があがるチャンスが巡ってきました。信用売り残の増加です。信用売りの過大な増加により、逆日歩が発生。空売りポジションが決済される見通しが出てきました。以下に詳細を解説していきます。
ビックカメラの売り残膨らむ
「株主優待のタダ取り手法」を狙うときには、「現物の買い」と「信用売り」で株価の変動リスクを消します。しかしこのとき、ひとつやってはいけないことがありました。それは、信用売り残が膨らんでいる銘柄に手を出すことです。逆日歩が発生してしまい、損失が出ます。
信用売りの建て玉の量が買い玉のポジションを大幅に上回ると、逆日歩が発生します。ここで深くは触れませんが、逆日歩が発生すると、毎日、空売りポジションに損失が生じます。両建てに伴う空売りであっても同様です。しかも、両建てである以上、値動きで利益は出ません。ただ、ただ、逆日歩の支払い金利分だけ、含み損が増え続けます。結果的に、両建て手法で優待品をもらう予定が、かえって高い逆日歩を払う羽目になってしまいます。
今回紹介するビックカメラは、今、そんな状況にあります。優待権利日を前にして、信用売り残が異常に膨らみすぎています。信用比率にして、0.6倍。当然、逆日歩も発生しています。
空売りのポジションは、株価上昇と逆日歩の支払いで2重の含み損。権利日前の駆け込み需要で、もう一段の売り建てポジションが増えるようなら、さらに逆日歩の金額は増えます。現在の売買比率の構図が続くようなら、きっと逆日歩が途方もない金額になることでしょう。多少の心構えのある人にとっては、現在のビックカメラは事実上の売り禁銘柄です。
では、空売りポジションで損失が出始めているのに、なぜ信用売りが増え続けているのか?
その理由は明白です。両建て手法を行う個人投資家があまりに多いためです。株主優待目当てに、個人投資家が次々と「現物買い」と「信用売り」の両建てで参加してきているのでしょう。個人投資家の割合が多い優待銘柄では、この手の状況が多々あります。
優待タダ取りを行う参加者が多勢を占めると、「現物買い」と「信用売り」の出来高ばかりが増えて、「信用買い」の出来高は増えません。結果、「信用買い残<<信用売り残」の構図が出来上がります。
両建てポジションを踏み倒す
株式の格言に、「逆日歩に売りなし。逆日歩に買いなし。」という言葉があります。この言葉は「逆日歩が生じるている銘柄は、下落しても逆日歩の支払い分だけ不利な空売りになる」「逆日歩が出るくらい売られているから、買っても上がらない」という意味を含んでいます。
ただ、逆日歩銘柄が上昇トレンドを描いているなら話は別です。通常、逆日歩銘柄は上昇しません。なぜなら、売り手の方が多いためです。「空売りが多いから下落する」「下落トレンドだから、さらに空売りが増える」「空売りが増えすぎて、逆日歩が出る」というメカニズムです。逆に、株価が上昇するなら、負けている空売りのポジションは、損切りで解消されていくと考えるのが合理的な思考です。
ところが、相場は必ずしも合理的な動きをするとは限りません。合理的な思考を持ち合わせない人、ルールをよく分かっていない人が市場に参加しているためです。今回の場合、優待目当ての初心者投資家がそれに当たります。逆日歩の危険性を知らずに、にわかの知識で両建てをしているのでしょう。逆日歩のリスクをよく分かっていない人が、空売りを仕掛けている状況が目に浮かびます。
これは、空売りを踏みあげる絶好の機会です。なぜなら、逆日歩の支払い金額が膨らめば、損失が増えた空売りポジションを閉じなければならない日がやってくるからです。その後に、市場で待っているのは「新規買い」と「買い戻し」の取引だけになります。きっと、さらなる株価上昇の流れがやってくることでしょう。
言い方は悪いかも知れませんが、「素人の空売りポジションという格好のカモ」がやってきています。ここが買いのポイントです。
人気の株主優待は高く付く
だらだらと書きましたので、内容を簡潔にまとめます。手法のポイントは以下の通りです。
- 優待権利日が近づいても株価上昇が続く銘柄は狙い目。
- 信用残のデータを参照する(証券会社の銘柄情報や東証HPを参照)。
- 「信用売り残<<信用買い残」ならチャンス。逆日歩が発生している。
- 逆日歩が発生している空売りポジションは損失で解消される。踏み上げるチャンス。
- 高値と思っても、信用残が増え続けているようなら、目をつぶって買ってしまえ。
株主優待のタダ取り手法は、アベノミクス以前の相場では有効な手法でした。しかし、もはや陳腐化した手法なのかもしれません。その理由は、優待目当ての個人投資家が増えてきたことです。個人投資家が少なかった頃は、相場の歪みがまだ残っていました。しかし、いまやNISAやアベノミクス相場で個人投資家の数は増え続けています。メジャーとなった手法は、必ず陳腐化するのが相場の常です。株主優待の両建てタダ取りという手法も、その道を辿るのではないでしょうか。
株式市場は、「誰かが勝ったら、どこかで誰かが負けている」場所です。みんなが勝つというような状況はありません。みんなが両建てを行っても、全員で得をするというのは無理な話です。今回のビックカメラでは、その無理が逆日歩という形で現れています。この状況が続けば、権利日には間違いなく高額の逆日歩が生じます。脳裏に浮かぶのは、しかばね累々の状況です。場合によっては、市場から退場する投資家も出るかもしれません。穏やかな言い回しをしましたが、退場=破産です。数百万単位の逆日歩も過去に発生した事実があります。
往々にして、人気の株主優待ほど両建てのターゲットになりやすい傾向があります。しかし、両建てはノーリスクではありません。むしろ、逆日歩は被害が大きいリスクであり、予想をはるかに上回る損失を抱えるかもしれません。
まあ、その陰にはローリスクで利益を上げる手法が隠れていたりするものです。以下の記事も読んでみてください。
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