2015年の小判ザメは不振続き

本日は2015年10月。最近、株式関連のニュースを読んで、ある考察を行ってみました。今年の上期からTOPIX買いの空振りが続いていた理由です。

TOPIX買いというのは、主としてGPIFが特定の日に新規採用銘柄を買い付ける行為を指します。買い付ける日と購入銘柄がおおよそ決まっているので、それに便乗すれば利益が出るという寸法です。しかし、2015年に入ってからどうにも便乗買いがうまく機能していませんでした。しばらく考えを巡らせていたという訳です。

結論は「これまでGPIFは売っていた」ことが原因だと思います。一方で、今後はTOPIX買いの復活もあると思います。詳細を書いていきたいと思います。

  1. GPIFの利益確定売り
  2. 構成銘柄の売りと新規買いの規模
  3. 今後の動向を予想する

GPIFの利益確定売り

東証一部指定と言えば、新興銘柄にとってのひとつのゴールです。投資家にとっては買いの理由です。TOPIX指数に組み込まれた結果、連動ポートフォリオを作ってパッシブ運用を行う投資機関が新規買いを行うためです。特に、国内最大級の投資機関であるGPIFが新規採用銘柄を買い付ける行動は「TOPIX買い」「インデックス買い」と呼ばれ、そこに便乗する投資家の生命線でもありました。いわゆる現代版「小判ザメ投資法」です。

参考記事:TOPIX買いで小判ザメ投資法

上記の記事を読んで頂くと分かりますが、GPIFのような大型の運用機関が買い付けを行うと、株価は大きく動きます。目安としては、アベノミクス以前なら3~5%、アベノミクス以降は5%~ストップ高になる程、大規模でした。買い付けの日を特定し、新規TOPIX採用銘柄の買いに便乗することで、一日、二日の短期で大きな利益が出ていたのです。

しかし、2015年の年明けあたりでしょうか。どうにも、買い付けがあるはずの日でも、新規TOPIX採用銘柄が買われない傾向が出てきました。厳密にはパラパラと買われていた日もあるのですが、どうにも従来とは感触が違うんです。そんな内容を書いたのが以下の記事。当時はGPIFが裏を書いた結果、買い付け日がランダムになったとばかり思っていました。

参考記事:GPIFのTOPIX買い日がアトランダムになった件

結論から言うと、この推測は外れていたと考えます。買い付け日がランダムになったのではなく、どうやら規模が縮小されていたようなんです。根拠となるニュースが以下のもの。GPIFは、なんと2015年上期は保有株式を売り越していました。

GPIFや3共済:国債9577億円、日本株4068億円売り越し-4-6月

ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や公務員らが加入する共済年金は4-6月期に、国債・財融債を9577億円、日本株も4068億円売り越した。海外の債券や株式は2兆1490億円買い越した。日本銀行が17日公表した資金循環統計で分かった。

GPIFや国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団、年金特別会計などの「公的年金」は国債・財融債を8四半期連続で売り越した。6月末の保有残高は52兆7834億円と2004年9月末以来の水準に減少。国庫短期証券はほぼ横ばいだった。

日本株の売り越しは6四半期ぶり。株価の上昇もあって保有額は41兆5926億円と4四半期連続で過去最高となった。

構成銘柄の売りと新規買いの規模

株式の売り越しによりTOPIX買いが行われない状況。両者の関係は単純なイコールではありません。厳密には、TOPIX買いは行われていたのでしょう。TOPIXポートフォリオを指数を連動させるには、新規採用銘柄を組み込まないと矛盾が生じてしまうからです。

既存構成銘柄ばかりでTOPIX連動ポートフォリオを組んだ場合、TOPIX指数が上がった場合には、既に割高な古株銘柄ばかりを買い付けなければなりません。これはインデックス運用の本来の目的を忘れた、不健全な状態です。そうでなくとも、GPIFはベンチマークとのトレーサビリティ(TOPIX指数との連動性)を重要視しているようです。GPIFの適時開示情報を読んだ感想です。海外のヘッジファンドと違ってGPIFは公共団体であるので、結構いろいろな情報を開示しています。詳しい話は以下の記事にも書いてみました。

参考記事:GPIFによる株式パッシブ運用の実態

本筋に話を戻しましょう。株式を売り越すと、なぜTOPIX買いが行われなくなるのか。それは買い付けの資金量が減るためです。つまり、(多分)TOPIX買いは行われたいた。しかし、金額が少なすぎて、相場の波に飲み込まれてしまったんだと思います。

ポートフォリオの縮小とTOPIX買い金額

ポートフォリオの縮小とTOPIX買い金額

上の図を見て頂くと分かってもらえると思います。新規採用銘柄を買い付ける金額は、ポートフォリオ全体の金額によって決まります。GPIFが2015年上期に売り越したのであれば、株式運用の金額も全般に渡って減っていたことでしょう。当然、それに従ってTOPIX買いの規模も小さくなり、TOPIX買いを判別できぬほどに売りに押される場面もあったという訳です。

以上は飽くまで個人の推測ですが、少なくとも相応の屁理屈にはなっているんじゃないでしょうか。実際、新規採用銘柄でも買い付け規模の大きい銘柄だけ株価上昇が確認できた日もありしました。

今後の動向を予想する

最後にGPIFと今後のTOPIX買いの動向を推察してみましょう。おそらく、ではありますがTOPIX買いが2015年下期から復活すると考えます。理由は2つ。一つは利益確定の売りでGPIFの買い付け余力が増えたこと。もう一つは、8月の買い日に一度、復活していた様子があることです。

一つ目の買い付け余力が理由になるのは、いわずもがなですね。4ー6月の売り越しで、GPIFには5兆円ほどの買い付け余力が生まれたと言われています。幸いにも、上海ショックのあった6月の株価暴落以前の段階で売り抜けていた訳です。きっと手元資金は潤沢でしょう。加えて、既存構成銘柄の株価も下がっているので、相対的に新規銘柄に割り振られる金額がかさ上げされます。場合によっては、安値となった既存構成銘柄ごと買ってくるかも知れませんしね。

もう一つの理由は、管理人がTwitterで呟いています。去る8月27日(木)。どうやらTOPIX買いがあった模様です。

TOPIX買いをtweet

TOPIX買いをtweet

新規の東証一部指定銘柄は、翌月の最終売買日からTOPIXに組み込まれます。7月の新規採用銘柄であれば、8月は26日(水)でした。厳密に言えばが一日ずれていますが、この程度のずれは従来からありました。買い切れなかったのか、2日、3日と続いたこともあったので、想定の範囲内でしょう。

という訳で、今回はGPIFの懐具合を探ってみました。奇しくも、この記事を書いている前日、日銀の黒田総裁が金融緩和策の現状維持を発表したところです。小判ザメ手法を好む管理人としては、今後のTOPIX買い継続を望むばかりです。次の最終売買日が楽しみです。飽くまで個人の考えで予想してみました。

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