今回は株システムトレードの売買戦術「ブレイクアウト」について解説したいと思います。
株システムトレードのストラテジーには、有名どころとして2つの戦術が知られています。順張りと逆張りです。ただ、実はもうひとつの選択肢が存在します。それがブレイクアウトです。
ブレイクアウトとは、本来は値動きが大きい銘柄であるにも関わらず値動きが停滞している状況に着目し、株価が停滞から逸脱するタイミングで仕掛ける戦術です。ボラティリティの大きい銘柄をフィルタリングすることと、株価が停滞している状況を見出すこと、そして株価の上昇モメンタムが残っている間に手仕舞いすることが要諦となっています。
ブレイクアウトの具体例を交えながら、以下に詳細を綴っていこうと思います。
Contents
ブレイクアウトの特徴(順張り・逆張りルールとの比較)
はじめにブレイクアウトの概要と特徴をご紹介しましょう。
まず、株システムトレードには2つの種類の戦術が知られています。順張りと逆張りです。
順張りルールの特徴
- 価格の値動きに順行して仕掛ける
- 勝率は30%程度
- 勝率は低いが利益の高さでカバーする
- 保有期間は長期(およそ1週間から数週間に及ぶ)
- 含み益から始まることが多い
- 成績はあまり安定しない
逆張りルールの特徴
- 価格の値動きに逆行して仕掛ける
- 勝率は60%程度
- 保有期間は長期(スイングの場合はおよそ1週間から数週間に及ぶ)
- 勝率は高いが利益は少なめ
- 含み損から始まることが多い
- 成績は安定することが多い
順張りと逆張りを並行して行うことで、お互いがお互いをカバーし、成績が安定する傾向にあります。ただし、スイングトレードになることが多く、信用取引(レバレッジ)との相性があまりよくありません。
そこで、第3の選択肢として、「ブレイクアウト」と呼ばれる種類のルールを加えると売買のバリエーションが広がります。
ブレイクアウトの特徴
- 価格の値動きに順行して仕掛ける
- 勝率は50%程度
- 保有期間は短期(デイトレから2~3日の短期スイング)
- 利益は控えめ
- 含み損から始まるか含み益から始まるか分からない
- 短期トレードなので成績がすこぶる安定している(ドローダウンが少ない)
短期トレードを前提にしているため、ドローダウンが少ない傾向があります。つまり、追証の懸念が少なく信用取引との相性が良いということです。
ブレイクアウトの本質は、ボラティリティトレードだと考えています。ボラティリティの大きい銘柄は株価が行き過ぎる傾向にあります。詳細は後述しますが、この株価の行き過ぎが利益の源泉となっています。順張り手法であるブレーク法にも似ているのですが、トレード期間や勝率、銘柄のフィルタリング方法などが全く異なります。
ブレイクアウトの売買ルール
では、ブレイクアウトの具体的なルールについてご紹介していきましょう。
と言っても、ここでルールを公表することはしません。というのは、ブレイクアウトについては偉大な先駆者がいらっしゃるからです。cosisinさんという方で、2013年ごろにブログを更新されていました。
現在はブログの更新が止まっているようです。ただ、ブログそのものは残っていて、現在でもルールを公開したページが残っています。
以下のページで、ブレイクアウト(スイングトレードバージョン)のサンプルルールを公開されています。具体的なルールとイザナミ(スポンサードリンク)の設定方法が書いてあるので、参照ください。ほかにもデイトレの売買ルールなども公開されています。
リンク:デイトレサンプルをスイングに改良(cosisinのブログ)
ユニークな点は出来高にもこだわりを持ってトレードルールを作られている点ですね。管理人はあまり出来高の傾向をルールに組み込むことが得意でありません。この点も非常に参考になりました。
ブレイクアウトの検証結果
さて、cosisinさんのブログは2014年で更新停止されているので、現在の検証結果が分かりません。そこで管理人の方で2022年現在のルール検証を行ってみました。以下の通りです。
ご覧の通り、非常にきれいな右肩上がりの資産推移となっています。最適分散は投入資産100%のレバレッジ3倍で検証しています。
近年の成績があまり振るわない点が難点でしょうか。ただ、ご本人も仰る通り、あくまでこれは「サンプルルール」です。改良の余地があるということで、改良方法について後述していきたいと思います。
ブレイクアウトの本質
個人的にルールの改良に重要なことは、その売買ルールの本質を読み解くことだと思っています。そこで改良に先立ち、ブレイクアウトの本質を考察してみましょう。
これは管理人なりの解釈なのですが、実際の売買ルールから読み解けるブレイクアウトの本質は以下の事柄だと思っています。
ブレイクアウトの本質
- 信念:株価に行き過ぎは付き物である。ただし、どのような銘柄にも停滞期が存在する。その停滞期に着目する。株価が停滞期から逸脱(ブレイクアウト)すれば、買われすぎが発生し、利益が生まれる。
- 銘柄フィルタリング:値動き(ボラティリティ)の大きな銘柄をフィルターで抽出する。
- セットアップ:上記の値動きが大きい銘柄の株価が停滞している。
- 仕掛け:株価が停滞から逸脱(ブレイクアウト)する。
- 手仕舞い(利益確定):株価が大きく動き、上昇モメンタムが発生。モメンタムが消失しないうちに手仕舞いする。
- 手仕舞い(損切り):利益が出ないようなら早々に損切りする。
- 備考:停滞期には出来高が減りやすい。地合いが良いときの方がブレイクアウトが発生しやすい。
上記の本質的な事柄を具体的なルールに落とし込むことが改良のポイントだと思います。
なお、ここで言う「セットアップ」というのは仕掛けの前の準備段階のことを指します。ある特定の状況を準備段階(セットアップ)とし、そこからさらに値動きや変化(トリガー)があったところで仕掛けるというのが、一般的な売買ルールの作り方です。外国人著者の投資書籍でよく使われる相場用語のひとつです。
ブレイクアウトの売買ルールを改良する
そんな訳で、管理人なりにルールを改良してみました。以下に検証結果を掲載します。
1トレード当たりの期待値は下がったのですが、資産曲線が近年でも上昇するようになりました。
改良のポイントだけご紹介しましょう。以下の通りです。
- 銘柄フィルタリングでボラティリティの大きい銘柄を抽出した。
- 「株価が停滞している」という状況を自分なりの別の表現に変更した。
- 手仕舞い(利益確定)の条件を変更した。より利益を逃がしにくい条件に変えた。
もっとも、まだまだ改良の余地があるとも考えています。特に利益確定の条件ですね。単純な時間条件だけでなく、利益率や値動き等の何らかの条件に変更してもよいのではないかと考えています。
おわりに
以上の通り、今回はブレイクアウトの売買ルールについて、その詳細を解説してみました。順張り、逆張りに加えて、第3の選択肢として持っておくと利益がより安定しやすくなると思います。
前述のcosisinさんのブログは2014年以降は更新されていないようです。この点、マイナーチェンジしたルールをシレっと公開して「オリジナル手法だ」とドやるという悪い考えも頭によぎりました。ただ、実際にそんなブログが存在することを見つけてしまったので、ここは先駆者の名誉を尊重することにした次第です。
同氏のブログを隅から隅まで読んでみると、意外と改良のヒントが隠されていたりします。興味のある方は、ご覧になってはいかがでしょうか。
リンク:デイトレサンプルをスイングに改良(cosisinのブログ)
もちろん、当ブログでもサンプルルールを公開していますよ。イザナミ(スポンサードリンク)で使える色々なルールをご紹介しています。興味のある方は当ブログの記事も併せてご覧あれ。
カテゴリー:システムトレード(日曜2限の株式講座)
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