日曜2限の株式講座

ヘッジファンドの45日ルールと売りの時期

ヘッジファンドの45日ルールと売りの時期
ヘッジファンドの45日ルールと売りの時期

海外投資機関を理解する上で欠かせない「ヘッジファンドの45日ルール」について解説します。特定の時期になると、彼らは相次いで株式のポジションを売りに出します。彼らの売りが相次ぐ理由と、その具体的な時期にまで踏み込んで解説します。

2012年にアベノミクス相場が始まってから、海外勢による国内株の売買が市場を大きく左右する傾向が出てきました。と言っても、彼らは買い一辺倒でもありません。売るときは売るときで、一斉にポジションの量を減らします。その行動が現れる典型的な例が、5月に株価が暴落するアノマリー(セルインメイ)でしょうか。一般にはヘッジファンドによる売り仕掛けが要因であると言われ、彼らは悪者扱いされています。

この悪者説には、管理人は異議を唱えます。海外投資家も売りたくて運用資産を売却している訳ではありません。彼らにも彼らなりの理由と事情があって売らざるを得ないのです。今回はヘッジファンドの売買事情と独特の弱みについて語ります。

  1. ヘッジファンドの45日ルールとは
  2. 実は不可抗力の決済売り
  3. 売り仕掛けに注意する時期
  4. アベノミクスと海外投資家

ヘッジファンドの45日ルールとは

ヘッジファンドの決算に絡んで、最初に知っておくべき重要なルールをご紹介しましょう。ヘッジファンドのトレーダーが利益確定の意志決定を下すときに要因となる一つのルールがあります。それが、ヘッジファンド顧客の解約に関する契約条項。通称「45日ルール」です。

45日ルールとは

ヘッジファンドの顧客は、資産預け入れ先の委託ファンドに解約を申し出る場合、決算日の45日前までに申し出なければならない。

これだけ見ても何のことだか分かりませんね。では、視点を変えてみましょう。顧客視点の契約ルールから、ヘッジファンド視点の都合に焦点を合わせます。

ヘッジファンド視点の45日ルール

ヘッジファンドの運用成績に不安がある場合、決算日45日前の期限が近づくにつれ、顧客から解約の申し出が相次ぐ。ヘッジファンドは、解約に伴い顧客に資産を返却する必要があるため、運用しているポジションを決済して現金を用意しなければならない。

現状では解約が具体化していない場合でも、決算前に解約が殺到してしまえば焦げ付き騒ぎを起こすリスクが残る。決算前になって資金ショートを回避するためにも、まとまった現金を用意しておかねばならない。

顧客目線からヘッジファンド目線に変えると、がらりと見方が変わりましたね。ヘッジファンドは顧客の資金を運用するサービス業ですから、解約が相次げば返金が必要な訳です。相場の先行き不安を持つ顧客と、より多くの資金を運用して利益を上げたいヘッジファンド。その葛藤が繰り広げられるのが、決算日45日前の締め切り前という訳です。

実は不可抗力の決済売り

前述の45日ルールを理解すると、ヘッジファンドの弱みが見えてきます。彼らが資産を決済するのは不可抗力であるという点です。「利益が出ている間は伸びる限り伸ばせ」が投資の鉄則です。しかし顧客の解約リスクが想定されるため、現金を用意して返金の準備をしなければなりません。決算を控えて、泣く泣く利益確定せざるを得ないのです。

ヘッジファンドの決算は、基本的に4半期決算です。10年単位の長期投資を考える海外勢もいますが「ヘッジファンド(hedged fund)」に分類される投資機関は短期運用がメインです。付け加えると、資金ショート回避の点から、現金化が容易な資産が好まれます。この点、現金化が容易=流動性が潤沢な金融商品として、日経平均先物のようなインデックスポートフォリオが選ばれます。ヘッジファンドの決算売りが始まると先物主導で下落するのは、こうした理由があるためです。

ロングオンリー(※)のヘッジファンドにしてみれば、下落した局面で売るのは不本意なことでしょう。特に日本株なんて、決算時期を過ぎれば続伸が期待できる相場です。それでもヘッジファンドは顧客の預かり資産を運用しているに過ぎません。相場の事情を知らない顧客からすれば、満足いく利益を上げていなければ解約してしまいたいのです。ファンドマネージャーにも、ポジションを決済せざるを得ない不可抗力的の事情があるのですね。

※ロングオンリー:ロング(=買い)しか行わないファンドを指します。他には、空売りも併用する「ロング・ショート」や、裁定取引を行う「アービトラージュ」など。ヘッジファンドは採用する戦略によって、いくつかの分類がなされます。

ヘッジファンドのポジション縮小のメカニズムが顕著に現れるのが、5月の株式市場です。俗に言う「セルインメイ(Sell in May)=株は5月に売れ」というアノマリーですね。5月の中旬というのが、ちょうど半期の決算前に当たります。この時期に、ヘッジファンドのポジション縮小から始まった売りが、新たな売りを呼び、結果、よく知られている日経平均大暴落が起こるというメカニズムです。

売り仕掛けに注意する時期

具体的なヘッジファンドの決算時期を最後に解説しましょう。彼らの生態については、実は未だに詳細が分かっていません。ただ、海外の機関なので、4半期決算を採用しているという説があります。決算時期が3月、6月、9月、12月という考え方です。

繰り返しになりますが、解約には45日ルールというものが存在します。決算月から45日を逆算しましょう。下図のように決済売りの時期が見えてきます。2月初旬、5月、8月、11月ですね。5月のセルインメイについては、前述の通りです。

45日ルールとポジション決済の期間
45日ルールとポジション決済の期間

5月に比べて、あまり意識されていないのが、2月でしょうか。実は2月も株式市場は例年、下落している傾向にあります。一般には「正月のご祝儀相場が一服するからだ」と解釈されていますが、実はヘッジファンドの決算前であることも下落要因の一つなのでしょう。実際、今年の2015年の2月も、国内機関投資家は買い越しポジションが多かった一方、海外投資家は売り越しに傾いていました。

8月の決算売りは意識しなくてもいいかも知れません。もともと8月は夏枯れ相場で、株式の売買があまり行われないためです。むしろ、夏枯れ相場を意識する前に、海外勢のサマーバケーション前の買いが相次ぐ7月の方が重要でしょう。

11月は、夏休み後に積み上げられたポジションの大きさ次第でしょうか。第3Qという微妙な決算でもあるので、それほど大きな動きは出ないかも知れません。

アベノミクスと海外投資家

以上の通り、ヘッジファンドの決算があるという視点から、株式相場の季節要因を考察してみました。結局の所、株価というのは需給で上下する生き物だということが見えてきますね。ヘッジファンドの決済を逆手に取ると戦略の幅が広がります。押し目を拾ってもよし。あらかじめ売り抜けてもよし。敵方の弱みが見えていると、こちらも戦略の練り甲斐があるというものです。

以下は、2015年5月最終週の日経平均売買動向です。機関投資家(国内・海外)と個人の売買ポジションの変化が分かります。丁度、日経平均が20,000円を超えて大暴騰していた週のデータですね。記事を書いている現在手に入る最新のデータです。

投資家分類 売買 金額(千円) 比率(%)
国内法人 売り 824,956 7.2
買い 829,775 7.4
Total 1,654,731 7.3
個人投資家 売り 4,006,022 35.2
買い 3,335,133 29.7
Total 7,341,155 32.5
海外投資家 売り 6,328,069 55.6
買い 6,882,382 61.3
Total 13,210,451 58.4
証券会社 売り 225,639 2.0
買い 176,740 1.6
Total 402,379 1.8

「アベノミクスは官製相場」なんて言われます。しかし表を見ての通り、国内投資家よりも海外投資家が売買の主体となっていたことが理解できます。売買金額の58%を占めています。比率の多寡を比べれば一目瞭然です。

アベノミクスは単なるきっかけに過ぎないのでしょう。流動性が高まった日本市場に、海外筋の新たな資金が集まった。この解釈が株価高騰の妥当な理由であると管理人は考えます。流動性が高い(=現金化が容易である)点も、ヘッジファンドが投資しやすい重要なファクターですしね。

アベノミクス相場で波に乗って利益を出すためのキーワード。それは海外投資家の「需給動向」や「季節要因」なのかもしれません。今回の豆知識が読者の皆さんの利益に繋がれば幸いです。

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  • コメント ( 2 )
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  1. 2017年11月9日前の日本株式16日連騰(凄い確率も不自然)及びその後に暴落は、まさにヘッジファンドが黒幕と確信した。SQ日は11月10日であった。何も外因は無いのに(VIX指数が何故か20以上の為?)日本株式が先に暴落し、法人減税法案が不透明となった二番煎じ報道をここで大手メディアがわざわざ発信し(情報操作機関?)、米国株式が後に続いたのも通常から判断すると非常に不自然。

    • コメントありがとうございます。

      16連騰は確かに不自然でしたね。まあ、度が過ぎたドレッシング買いなんでしょうね。

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