今回は、チャート形状・チャートパターンを読み解く空売り手法をご紹介します。特定銘柄の下落パターンを解読し、繰り返しの売りを仕掛ける売買ルールです。エンベロープのインジケータを使い、チャート分析を行います。
多くの株式チャートを見ていると、ある銘柄が特定のパターンを描いて下落・上昇を繰り返していることに気付きます。値動きの背景には、大口投資家の売買ルールがあるのでしょう。海外勢の機関投資家が特定の銘柄を処分している場合に顕著で、暴落を起こさぬよう気を遣い、段階的に決済している様子が伺われます。
そんな銘柄の株価チャートには彼らの決済ルールが反映され、特定のパターンに従って株価が下落します。今回のトレードルールは、そんな下落パターンに便乗する手法となっています。
- ディスコ(6146)の下落パターン
- エンベロープの売買シグナル
- 特定のチャートパターンを描く背景
- エンベロープ売り銘柄のヒント
ディスコ(6146)の下落パターン
最初に、特定のチャートパターンに沿って下落トレンドを描いた銘柄をひとつご紹介しましょう。ディスコ(6146)です。この会社は半導体装置を製造するメーカーで、半導体業界と工作機械業界の中間的な位置付けのある銘柄です。
上記の通り、ゆったりとした下落曲線を描きながら株価は最終的に12000円⇒8500円と下落しました。下落の理由はスマホショックです。中国の成長停滞により、同国で需要の多いスマートフォンの販売台数低下が明らかになった事件です。このときの半導体の需要はスマートフォンが支えていましたから、売り上げ低下が連想されて売り材料となりました。
この時期(2015.12.26)に書いている時点では今更感が強いのですが、ノウハウが抽出できたので記事に残そうと思います。今回のテーマは「チャートパターン」を分析しての空売りです。
エンベロープの売買シグナル
前述のチャートではパターンが見えてこないので、分析指標を利用して見方を変えてみましょう。使うインジケータは「エンベロープ」です。対象期間には一般的な「25日間」「±3%」「±6%」を設定します。まあ、実際の値動きにフィットするなら、あまり数字にはこだわらなくてよいでしょう。
売買ポイントに○をつけてみました。これでパターンが見えてきたと思います。要は、エンベロープの下半分で下落・リバウンドを繰り返すパターンですね。チャートの中央で売りからのエンベロープ下端で決済するルール。このパターンで売買すれば良いわけですね。トレードルールの要点は以下の通りです。
- エンベロープの中心で売りエントリー
- エンベロープの下端(-6%)で決済
驚くくらい簡単なトレードルールです。なのに、繰り返しの売買で何度も利益を上げることができます。問題があるとすれば、下落トレンドの最後には繰り返しパターンが終焉するところでしょうか。まあ、その場合は損切りして、この銘柄の売買を終了します。さよならbye-bye(売買)という訳です(ぉ。
特定のチャートパターンを描く背景
トレードルールが分かった所で、なぜこんな一定のパターンを描くのか理由を考えてみましょう。これは推測になりますが、大口投資家、おそらくは海外筋の処分売りが実施された結果だと考えます。
大口投資家は、基本的に処分売りには気を遣います。株式保有量の大きさゆえに、一度に売ってしまうと相場を崩してしまうからです。意外かもしれませんが、彼らは値を動かすことを嫌います。手の内がばれてしまいますし、株価が下落すれば利益が目減りするためです。もっとも、取引高などを見れば、彼らの足跡が見つかります。
海外投資家であろうという推測は、処分の仕方が根拠になります。第一に前述のエンベロープを使った売りルールは、海外の銘柄で見られるものです。日本ではあまりメジャーではありません。加えて、ディスコ(6146)が売られた7月前後の時期。この時期が、海外ヘッジファンドの決算時期と重なっている点も根拠を後押ししています。
参考記事:ヘッジファンドの45日ルールと売りの時期
これらは推測でしかありませんし、事実確認は困難です。表面的にはトレードルールには関係ないかも知れません。ただ、何を根拠にトレードを行うのかというファンダメンタル要素は抑えておく必要はあるでしょう。株式売買はテクニカル×ファンダメンタルで方向が合致して、初めて根拠のある取引をすることができると考えます(管理人個人の主張です)。実際問題、後述する銘柄探しのヒントになります。
エンベロープ売り銘柄のヒント
最後に、今回ご紹介したチャートパターンが成り立つ銘柄を探す方法のヒントを述べます。
「ヒント」と曖昧な書き方をしたのは、まだスクリーニングの手法が確立できていないからですね。エンベロープという、あまりメジャーではない指標を使うので、なかなか適用できそうなスクリーニング式が作れません。もしかしたら、もっと奥深いシステムトレードの世界にまで踏み込んで考えなければならないのかも知れません。
ただ、銘柄探しのきっかけは作ることができます。ここまで書いてきたポイントがヒントでしょう。エンベロープ売りが効きそうな銘柄は、以下の要件で絞り込めばよいと思います。
- 機関投資家の割合が多い(四季報の大口株主を参照)。
- 海外投資家の割合が多い(四季報の外国人比率を参照)。
- 東証一部級の大型株である(上記2要件を満たせば、ほぼ必然)。
- 大きな下落要素があった(今回ならスマホショック)。
- 売りの時期である(例年5月~9月)。
基本的に、いずれの要件も機関投資家の資金離れを狙うための要件ですね。加えて、売りの時期にエンベロープ売りの銘柄が出現する確率が高まるかと思います。時期は5月(セルインメイ)~9月(夏枯れ相場)の間ですね。
そもそもが、夏の前後は株価が下落する傾向のある時期です。特定の市場に大きな変化があったら、空売り銘柄を探す際に良いヒントになるでしょう。頭の片隅に入れて、チャートを眺めて見ると良いと思います。
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