今回は、近い将来に注目されるであろう3D NAND銘柄を探っていきたいと思います。
2016年に入って、半導体業界ではにわかに特需の噂が出ています。3D NAND(3次元NAND)という半導体の微細化プロセスが量産に入るためです。既に韓国サムスンや東芝が大規模な設備投資を宣言しています。フラッシュメモリを使った記憶装置=SSD(Solid State Drive)の市場拡大も需要に追い風を吹かせています。
4年に一度と言われる半導体業界の景気サイクル。新製品への設備投資に伴い、半導体の製造装置メーカーにも特需の恩恵がありそうです。今回は、そんな半導体関連銘柄を探っていこうと思います。
- 3D NANDと特需の構造
- 3D NANDフラッシュの関連銘柄
- フラッシュメモリの主要プレーヤー
- メジャーな半導体銘柄
- 半導体製造装置メーカー
- 半導体関連のニッチ銘柄
- 個人的な見解
Contents
3D NANDと特需の構造
最初に「3D NANDとはなんぞや?」という話から。簡単に言って、半導体のメモリ容量を増やすことができる新技術です。従来は平面上(2D)に広がっていた回路を積層構造(3D)にして密度をあげたという技術ですね。平屋の一戸建てがマンションになったと解釈してもらえれば良いと思います。技術的にはエッチングプロセスが複雑だとか、アクセス方式が従来と異なる等々あるのですが、難しいことは割愛します。
3D NANDには、大容量化・高耐久・アクセス速度向上・消費電力低減など多くのメリットがあります。ただ、歩溜まりに問題があってコスト面ではまだ競争力がありませんね。既に量産を開始している韓国Sumsungも適用製品はハイスペックモデルに限られています。
単に新技術というだけではなく、フラッシュメモリの需要が増加している背景が技術の必要性を後押ししています。具体的にはSSD(Solid State Drive)の需要増加です。SSDは従来のHDDに比べてアクセス速度が速いメリットがあります。その機能ゆえに、2016年のPC向けSSD需要は昨年から約20%増加しました。一説によると、今後もHDDからの置き換えでSSD生産量は2桁成長を続けると言われています。
さらに重要なのが設備投資です。3D NANDは従来のチップと製造プロセスが異なるので新規の製造装置を必要とします。この設備投資の金額がまた大きい。東芝&WesternDigitalが約1.4兆円、韓国Sumsungに至っては約2.2兆円の投資を行なうと発表しています。ゴールドラッシュが来ればスコップが売れます。チップメーカーだけでなく、製造装置メーカーにも大きな利益が生まれるという寸法です。
3D NANDフラッシュの関連銘柄
前置きはこれくらいにして、早速、関連銘柄の紹介に移りましょう。ざっくり言って、主要プレーヤーと製造装置メーカー、そしてメーカーではないけれども恩恵を受けそうな商社に分けて考えます。間接的に半導体業界の構造が分かってもらえれば幸いです。
フラッシュメモリの主要プレーヤー
最初に3D NANDの主要プレーヤーとなる半導体メモリの生産メーカーを紹介します。現在の半導体業界は、大きく4つの勢力に分かれます。以下の通りです。
- 韓国Sumsung(サムスン電子)
- 韓国SK Hynix(エスケーハイニックス)
- 米Intel&Micron(インテル)
- 東芝&米Western Digital&米Sun Disk
サムスンは皆さんご存知でしょう。現在では半導体の生産量世界No.1の企業です。3D NANDの量産を世界で初めて開始した企業でもあり、既に3D NANDを搭載したSSDの販売も開始しています。足元ではスマートフォンの発火問題がニュースを賑わせていますが、意外に株価は高値を保っています。
尚、サムスンの株式は日本市場では取引されていませんが、SBI証券に口座を持っていれば外国株のカテゴリで売買することができます。また、IG証券の個別銘柄にも登録されています。外国株に興味のある方はこうした手段で買ってみても良いかも知れません。
SK Hynixは同じく韓国の半導体メーカーです。巷では知られていませんが、韓国ではサムスンに次いで業界2位の規模を誇ります。ただ、3D NANDに関しては報道が見られませんね。サムスンの後追い銘柄として頭の隅に入れておけばよいでしょう。
米国にも半導体があります。代表選手が言わずと知れたインテルです。勢力図では米Micron社(MTI:マイクロンテクノロジ)をパートナーに持っています。「マイクロン」と言うと聞きなれないかも知れませんが、実体は色々と話題になった旧エルピーダメモリです。さらに遡ればNECと日立製作所を源流としています。
インテル、マイクロン共に米NASDAQに上場しています。前述の通り、SBI証券の外国株やIG証券のCFD取引で買うことができます。
最後の勢力が東芝、Western Digital(ウェスタンデジタル)、Sun Disk(サンディスク)の連合チームです。実は3次元NANDを世界で初めて開発したのは東芝です。経営や原発の不祥事で最近まであんな感じでしたが、半導体事業では黒字幅が増えています。これに伴い、株価は徐々に切り返しています。何気に半導体メモリの生産量はいまだに世界2位です。
ウェスタンデジタルとサンディスクはパソコンに詳しい方はご存知でしょう。それぞれ、ハードディスクとメモリで高いブランド力を誇ります。両社共に米NASDAQに上場しています。3D NANDの特需で直接の恩恵を受けそうなのはサンディスクの方です。東芝と共同出資した工場が三重県四日市にあり、3D NAND製品はこちらで量産される予定です。
メジャーな半導体銘柄
次に紹介するのが、ザ・半導体銘柄とも言うべきメジャー銘柄です。半導体業界では有名ではないのですが、株式業界ではなぜか話題に上がる銘柄も含まれます。いずれの企業も半導体の製造プロセスに関わるメーカーではあります。ただ、ちょっと話題先行になりがちな感もありますね。連想買いや話題の銘柄としてニュースで買われることも多そうです。
- 東京エレクトロン
- 日立国際電気
- ローツェ
- SCREENホールディングス
- サムコ
- 信越化学工業
- アドバンテスト
東京エレクトロンと言えば、日経225の一角を担う有名銘柄です。言わずと知れた半導体銘柄であり、おそらくは半導体需要の増加で株価を牽引する役目を果たすと考えます。ただ、225採用銘柄であるが故に日経平均株価の影響をモロに受けます。本業の利益とは関係のない所で株価が上下する点は面白くないかも知れません。日立国際電気やローツェも同様の大型銘柄です。両社とも、半導体の製造プロセスとしては完成品に近い部分の製造装置を生産しています。
この点、製造業界ではニッチな割に株式業界でよくニュースに取り上げられる銘柄がSCREENです。おそらくはアップルのiPhone需要で話題に上がることが多かったのでしょう。ただ、生産・販売している露光装置はスマートフォンに限らず半導体全般に必要なものです。3D NAND需要で再び話題になるかも知れません。
サムコと信越化学は半導体チップの基盤になるシリコンウェーハの製造メーカーです。シリコンウェーハは半導体の製造プロセスで初期段階で必要になる材料ですね。半導体業界ではそんなに有名ではないのですけど、半導体=シリコンウェーハという連想が働くせいか、半導体銘柄として頻繁に話題に上がります。連想買いの対象として良いかも知れませんね。
アドバンテストは、正確には製造工程ではなく検査工程で必要となる装置を作るメーカーです。メモリの品質保証・動作検証で使う検査装置を作っていますね。やっぱり製造業としては有名と言うほどではないのですが、株式ニュースではしばしば耳にします。
半導体製造装置メーカー
次に紹介するのが、半導体の製造プロセスを担う「生産装置」のメーカーです。ひとえに製造プロセスと言っても半導体の生産工程は多岐に渡り、非常に裾野の広い産業構造となっています。この点、ニッチ過ぎて話題に上がらず放置されることがあるかも知れません。決算前に仕込むのも、また一興です。
- ディスコ
- アルバック
- 日立ハイテクノロジー
- 東京精密
- 渋谷工業
- 芝メカ
- 新川
これらの銘柄は、ほとんど半導体専業と言ってよいくらい事業ポートフォリオが偏っています。作っている製品は、ウェーハの切断装置(ディスコ・東京精密)とか、真空装置(アルバック)とか、はんだ付け装置(新川・渋谷工業)などなど。正直言って、理系の私でも完全には分からない感じの加工装置を作っています。
ただ、それゆえに見過ごしされがちな半導体銘柄になりそうです。決算が出て大幅サプライズ。そんな面白みのある銘柄であると考えます。
余談ですが、逆に有名だけれども半導体事業のポートフォリオが大きくはないメーカーもいくつかあります。荏原製作所、ニコン、TDK辺りでしょうか。確かに半導体需要の恩恵は受けるけれども、利益は少ないだろうかと思います。
半導体関連のニッチ銘柄
最後に本当にニッチな銘柄を2つ。伯東とシンデンハイテックスです。両社とも半導体製造装置の商社です。海外企業との取引もあって、日本企業に販売するだけでなく、海外への輸出も手掛けています。
ポイントになるのは、韓国企業とのコネクションがあることですね。冒頭に書いた通り、3D NANDの主役となりそうなのはサムスンですし、半導体産業と言えば韓国のお家芸です。この点、伯東もシンデンハイテックスも韓国に海外支社を持っています。明確な裏は取れていませんが、おそらく主要な韓国メーカーとは取引があることでしょう。
気をつけたいことは、貿易を手掛けているが故に円高、円安の影響をモロに受けることですね。2016年は円高トレンドでありました。これと連動するが如く、両社の株価も低迷を続けました。半導体需要があるとは言っても、為替レートで利益が左右されることは頭に入れておきたいところです。
ちなみに悔しいのがシンデンハイテックス。この記事を書いている今日、+23%のストップ高になりました。アメリカ企業との提携を発表したためです。小型銘柄であるので、大幅高となりやすいですね。ええ、勿論、買っちゃいませんよ。
個人的な見解
最後に私事を少々。実は管理人、過去に半導体業界に身を置いていたエンジニアです。紹介した銘柄のどれかにも勤めていたこともあります。こうした理由から、今回の記事では少し熱く半導体関連の知識を語ってみました。
3D NAND特需に関して考えていることは、息の長い相場になりそうだと言うことですかね。3D NANDって何に利くかって、結局はコストメリットです。この点、先発のサムスンでもまだ歩溜まり(不良率)が改善してません。ここから品質が安定してくると利益が上乗せされてきそうです。フラッシュメモリとSSDの需要増加も長く続きそうですね。
目先の買い銘柄としては、製造装置のメーカーと商社の方が面白そうだとも思っています。チップメーカーの兆円単位の設備投資が魅力的ですからね。半導体装置専門でやっているメーカーは稼ぎ時です。一気に売上高・経常利益を押し上げてきそうです。
直近ではトランプミクスで日経平均が上がっています。ただ、個別の銘柄を見る限り、指数に連動する大型株ばかりが上がっていますね。この点、小型株の中にはまだまだ面白そうな銘柄が隠れていそうです。そんな銘柄探しのご参考になれば幸いです。
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