今回はニュースで報道されている日本の株式市場再編の動きについて言及したいと思います。
先日、東京証券取引所は現在の東証4市場を3市場に再編する改革案を発表しました。ポイントになるのは、東証一部市場の再編成です。従来から一部上場企業が多すぎるとの批判があり、これを縮小する狙いがあると言われています。
具体的には、一部上場基準の見直しです。新規の「プレミアム市場」と呼ばれる最上位市場への編入条件として、時価総額の基準が引き上げられることが検討されています。時価総額の基準価格は100億円とも200億円とも言われています。従来の上場基準が20億円であったので、かなりの数の企業が最上位市場から脱落することになるでしょう。
さて、この改革案が実行に移されると、日本の株式業界にはどのような影響が出るのでしょうか。今回は、管理人の憶測を交え、改革案が与える影響を考察していきたいと思います。
- 日本株市場の再編・改革案について
- 株式業界への影響を考察する
- パッシブファンドの買いはプレミアム市場に集中か
- 上場維持のための株主優待は衰退へ
- システムトレーダーはルールの再考が必要に
- おわりに
Contents
日本株市場の再編・改革案について
最初に、東京証券取引所が発表した改革案の概要を説明していきましょう。まず、従来の日本株市場は4つの市場に区分けされていました。東証一部、東証二部、東証JASDAQ、そして東証マザーズです。それが今回の改革案では、プレミアム市場、スタンダード市場、そしてエントリー市場の3つの市場に再編されると報道されています。
イメージでは、上図の通りとなります。もう少し具体的に書くと、まず東証一部の銘柄はその一部のみが最上位のプレミアム市場に再編されると言われています。理由は時価総額基準の変更です。従来の東証一部は時価総額20億円の上場基準を満たしていれば残ることができました。その時価総額基準が大幅に引き上げられる点が、今回の改革案のポイントです。多くの東証一部銘柄が上場基準を満たせずに脱落すると言われています。
残った旧東証一部銘柄は、東証二部やJASDAQの銘柄と合わせて「スタンダード市場(仮)」に移行する計画が練られています。また、マザーズを中心とした上場して日の浅い企業群は「エントリー市場(仮)」に移るとも言われています。
今回の改革案の本質的な骨子は、東証一部銘柄の振り落としです。以前から、日本の株式市場は東証一部銘柄が多すぎるとの批判を受けていました。そこで再編を行い、本当の大型株のみを最上位市場(プレミアム市場)に残そうという計画が建てられている訳です。
株式業界への影響を考察する
上記の改革案が施行されると株式業界にはどのような余波が訪れるのでしょうか。影響がある人、ない人。トレードスタイルによって二極化しそうな予感がします。
かく言う管理人は、影響が非常に大きい人になります。というのも、従来は東証一部市場への昇格予想や一部上場銘柄のTOPIX買い、さらにマザーズを中心としたシステムトレードで利益を上げてきたからです。正直言って、今回の改革案は「面倒だ」の一言に尽きます。
そんな訳で、以下には管理人なりに考えてみたことをつらつらと書いていこうと思います。
パッシブファンドの買いはプレミアム市場に集中か
最初に従来のTOPIX買いについて触れたいと思います。TOPIX買いというのは、パッシブファンドが東証一部市場の銘柄を定期的に買い付けるイベントのことを指します。従来では、特に新規昇格銘柄が東証一部への構成銘柄に組み込まれる際に、大きな買いが入るというイベントが発生していました。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
さて、今回の改革案では現在の東証一部市場に相当する「プレミアム市場」という区分けが誕生します。前述した通り、このプレミアム市場は日本の本当の大型株のみで構成され、日本を代表する株式企業群だけが軒を連ねることでしょう。おそらく日経平均もこのプレミアム市場を主体として算出されることになると思います。
結果として、前述したパッシブファンドの買いは本当の大型株だけに集中することになるでしょう。ファンド勢は大型株が好きですし(流動性が高いため)、東証一部の肩書がなければ時価総額20億円かそこらの企業を積極的に買う理由がありません。パッシブファンドの構成銘柄はプレミアム市場に集中するものと考えます。
一方で、TOPIX買いのインパクトは減ることでしょう。従来であれば、東証一部への新規上場企業は小型な割に流入資金が多く、TOPIX買いの日に大暴騰を起こすこともしばしばありました。しかしながら、今回の改革案でプレミアム市場に昇格するのは、時価総額が大きく、本当に流動性の高い銘柄です。TOPIX買いが入っても、その流動性に飲み込まれて、従来ほどのインパクトは発生しないのではないかと考えます。
上場維持のための株主優待は衰退へ
次に考えられるポイントは、株主優待の衰退です。従来からの東証一部企業は、その一部で時価総額を保つために個人投資家の買いを呼び込む必要がありました。株主優待の提供です。優良な株主優待を配ることで、時価総額および流動性を高める狙いがありました。
しかし、今回の改革案が実行されるとどうなることでしょう。まず、株主優待を実施しなければ東証一部市場に残れなかったような当落線上の企業は、軒並みスタンダード市場に再編されることでしょう。さらに、東証一部市場への昇格を目論む新興企業も時価総額の敷居が非常に高くなってしまって、モチベーションがダウンすると考えます。必然、昇格を目的とした株主優待の実施は大幅に減るものと予想されます。
もっとも、株主優待の人気は未だ健在です。一部のサービス精神旺盛な企業では引き続き株主還元を実施していくものと考えます。消えゆく株主優待は、取って付けたQUOカードとかカタログギフトのようなありきたりの商品です。将来、ここら辺のアクションの取り方を見たら、企業の本音が見えてきそうですね。
システムトレーダーはルールの再考が必要に
最後に管理人にとって、一番面倒な話がこちらです。従来から管理人はシステムトレーダーに変身しています。そんな管理人のお気に入りシステムの一つに、マザーズ市場のみを扱うという売買ルールがあるんです。
改革案が実行されれば、当然ながらマザーズ市場は消滅します。新規に「エントリー市場(仮)」という新興市場も生まれますが、いかんせん過去データがありません。過去データがなければ検証することができませんので、システムトレードの対象にはなりえません。管理人は、どうやら優秀な売買ルールをひとつ失うことになりそうです。
とは言っても、ピンチやチャンス。おそらく改革案の具体案が出てくれば、新しい売買ネタが出てきそうな予感もしています。また、10年待てばデータも揃い、新規の売買ルールを作ることも可能です。そうでなくとも、まだ手元に売買ルールがありますしね。興味のある方は以下の記事も参照ください。
記事:[実例あり]イザナミで使える売買ルールを作ろう[連載第1回]
おわりに
という訳で、今回は日本株市場の再編について思う所を述べてみました。書き方からして、なかなか管理人の悩み溢れる内容であったかも知れません。ただ、繰り返しになりますが、ピンチはチャンスともなり得ます。特に株式売買は「変化」や「変更」が利益を生むゲームです。これに懲りずに、また面白いネタを仕込んでいこうと思います。
いま考えている辺りでは、エントリー市場からのスタンダード市場への昇格条件や、スタンダード市場の株価指数への組み込みなんかが面白いんじゃないかと思っています。もし面白いネタがあったらコメント欄にでも書き込んでみてくださいね。
またのブログをお楽しみに。
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