半年ほど前からシステムトレードを始めています。今回はいくつかの検証ソフトを使ってみた使用感と評価を述べていこうと思います。無料ソフト・有料ソフトの両方を記載します。
株式のトレード方法には大きく分けて2つあります。一つは一般的に知られている裁量トレード、もう一つがシステムトレードです。前者がトレーダーの思惑や経験に基づく意志決定を行う方法で一般的です。これに対して、システムトレードは特定の「ルール」を作成・検証して、確率論的に勝ちにいく方法論です。
こうした検証は過去のチャートを見返すことでも可能です。しかし、実際問題として膨大な量のチャートを検証するためには、専用の検証ソフトが必要になってきます。管理人はこの半年間に、株式トレード検証ソフトを3つほど使ってみました。各ソフトの概要と長所・短所を語っていこうと思います。
- Protra(完全フリーソフト)
- tactico(株価データは有料)
- イザナミ(有料ソフト)
- おわりに
Contents
Protra(完全フリーソフト)
最初は無料の検証ソフトから紹介していきます。プログラマー有志で開発されている株式検証ソフト「Protra」です。
このソフトウェアの良い点は、完全無料である点です。後述するtacticoは株価のデータ更新が有料、イザナミはソフトウェアのライセンス料が高額です。この点、Protraはソフト本体も株価データも完全無料で利用することができます。
ただ、デメリットも多くあります。一番の難問が検証を行うためには売買ルールをプログラミングしなければならない点でしょう。C言語ライクのプログラムを組む必要があります。この点、プログラミングに触れたことがない方には敷居が高いものがあるでしょう。
Protraの問題
ソフトウェアの品質という点では、有志の集いで開発を行っている点に課題があります。簡単な話、お金のやり取りが発生していないので、品質保証の責任が発生していません。バグがあったり、アップデートの頻度が遅くとも開発サイドに保証責任がないのです。この点、どうしても品質は有料のソフトに劣ります。
具体的に目に付く問題は以下の通りです。
- 日々の株価を更新するスピードが遅い。
- 解析時間が長い
- 外部データを読み込むことが困難(がんばればできるか?)
- サポート体制が事実上存在しない
- 致命的なエラーが出る
致命的なエラーについて補足しましょう。管理人、しばらくProtraを利用していましたが、ある日突然株価が更新できなくなる事態に遭遇しました。原因は「山の日」です。2016年から新たにできた休日なのでプログラムが対応できず、エラーとなるのです。
フリーソフトの宿命として、ユーザーの責任でメンテナンスと課題解決をしていく必要があります。長期的な視野で見ると、どこかで利用継続を断念しなければならないリスクがあるということですね。実際、管理人は先の問題に遭遇して、別ソフトへの移行を決めました。
tactico(株価データは有料)
次は半無料の検証ソフトtacticoです。ソフト本体は株式会社ラガルトテクノロジーが提供するフリーソフトです。ただ、株価の長期データと日々の更新手続きに費用が発生します。長期データ(1990年~)が11,340円、株価更新のライセンスが年間9,400円です。株価データのみ、「データケット」という会社がソフトウェアとは別に提供しています。
Protraに次ぐ検証ソフトの候補として、管理人はこのtacticoをしばらく使ってみました。良い点は、検証速度が速いことですね。ソフトウェア技術者である作者の方のこだわりが感じられます。チャート画面のデザインもProtoraより洗練されています。
ただ、やはり検証にはプログラミングが必要です。xmlというデータ形式のファイルをtactico独自のルールに沿って書き上げる必要があります。ソフトの作者は「簡単だ」と紹介していますが、導入初期にはやはり勉強が必要になります。管理人、プログラムはN-88日本語ベーシックくらいしかできないので調べながら覚えていきました。
tacticoの問題点
事業のあり方の問題なのですが、ラガルトテクノロジーは株式会社と言っても、事実上の個人事業のようです。この点、やはり限界があるようだと感じずにはいられません。細かい点、細かくない点で色々と不都合が目に付きます。
問題点を挙げると、以下のようになります。
- サポート体制が充実していない(一応の対応はしてくれる様子)
- プログラム言語のマニュアルが難解・不足
- 外部データを読み込むことができない(有料のカスタマイズが必要)
- 売買ルールの評価機能が不足していると感じる
- 検証結果に致命的な問題が含まれる
致命的な問題について触れましょう。管理人、ある検証結果を眺めていてとんでもないことに気づきました。一日で株価が10倍になるトレードがあたったのです。「売買単元の変更」です。単元の変更が行われると株価が10倍になり、単元数が10分の1になります。本来、保有金額は変わらないはずが、tacticoで対応していないため10倍分の利益が出たと判定していたのです。
検証時間は短いし、プログラム言語さえ覚えれば簡単に検証ができるようになる点は優秀な検証ソフトだと思います。ただ、サポート体制やソフトウェアのアップデート、メンテナンスという点で事業の展開方法に問題があると感じました。
このソフトは必要があって、現在でも併用しています。ただ、基本のシステムトレードは次の「イザナミ」へ移行しました。
イザナミ(有料ソフト)
最後の紹介がこちら。永年ライセンスが162,000円もする検証ソフト「イザナミ」です。はっきり言って高いです。おいそれと出せる金額ではありません。実際、管理人は無料トライアルから始めました。
参考:株システムトレードの検証ソフト「イザナミ」(スポンサーリンク)
ただ、値段さえ気にしなければ非常に有用なソフトです。何が良いって、検証ルールの作成・改良が楽なこと、早いこと。これまでプログラム組んで検証していた時間が10分の1位まで短縮されました。同ソフトの「パレットアルゴ」というGUIは、それくらい簡単に売買ルールをいじり回すことができます。
イザナミの問題点
イザナミは全般的に検証機能で溢れかえっています。サポート体制も非常に充実しています。ほとんどの点で文句がありません。それくらい出来の良い検証ソフトです。
ただ、一点だけ厄介な問題があります。「信用残」の情報が株価データに含まれていないのです。というより、信用売りができない銘柄でも売ってしまうという検証の仕方をするようにできています。これは空売りのルールを検証する際に致命的な問題になります。「いざ実運用に移してみたら、空売りができない」「空売りできても逆日歩が発生する」「というより貸借銘柄で検証したら結果が変わるんじゃないの」といった事態に直面するためです。
とはいえ結論を言ってしまうと、上記の問題ははイザナミの機能を利用すれば解決することができます。「環境データの読み込み」という外部データのインポート機能です。単純に言って、日々の信用残のcsvデータを用意すればイザナミにインポートすることができるのですね。
という訳で、イザナミの利用で問題となるのは「どうやって長期の信用残データを用意するのか?」という点です。管理人は最近になって解決の糸口を見つけました。後日、公開したいと思います。
後日追記:イザナミで信用残データを利用する方法を考案しました。下記の記事を参照ください。簡単に言って「信用残データを買う⇒プログラムで形式を変換⇒イザナミの環境データで読み込み」という手順です。
おわりに
以前から、本サイトの記事では一定の売買ルールは示してきました。ただ、厳密に検証を実施したことがありません。今回、システムトレードの利用を公言したのには、具体的な検証結果を見てみたいという思いがあります。将来的には具体的な売買ルールを作成して、結果を公表していこうと思います。
ざっと思いつく所では、毎月のTOPIX買いや立会外分売の勝率・期待値でしょうか。特に立会外分売の勝率に関しては読者の方からの要望こそあったものの、膨大な量の実施履歴と個人の時間の都合で逃げてきました。まあ、個人的には期待値は低いだろうなと見積もっています。ただ、検証を繰り返したら良い銘柄の選定ノウハウが見つかるかも知れません。
大体の検討の目処は立っているので、あとは管理人の暇さ加減次第でしょうか。課題は娘の寝付きが悪くて自分の時間がなかなか取れないことですが・・・。今後はサイトの記事として、イザナミによるシステムトレードのネタも加えていきたいと思います。
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