先日、日証金(JPX)が取引時間延長の事案を見送ることを発表しました。現状、日本の株式相場は、取引時間が9:00~15:00と定められています。しかし、サラリーマンなどの定職に就いている方は、この時間には取引に参加することができません。取引市場の活性化のために、取引事案の延長が検討事案として取り沙汰されていました。
もっとも、忙しいサラリーマンでも夜間に取り引きする方法は存在します。PTS(夜間取引)です。現在ではすっかり廃れてしまいましたが、かつては多くの証券会社で、夜間も取引市場が賑わっていました。現在でもSBI証券や楽天証券を始めとする17社でPTS市場の取り扱いがあります。
廃れてしまったPTSですが、色々と便利な使い方があります。例えば、日中では買えないような割安の売り注文を探し出して、ピンポイントで買い付ける方法です。今回は、PTS(夜間取引)の特徴と、それを活かした取引ノウハウをご紹介したいと思います。
- 割安の売り注文を物色して指値買い
- PTS市場は現物取引のみ
- 流動性欠如により値が飛ぶ相場
- ストップ高銘柄でもPTSなら買えることも
割安の売り注文を物色して指値買い
PTS市場(夜間取引)というのは、今では廃れてしまった取引市場です。一時期こそ賑わってはいましたが、現在では大物株でもポツポツと注文が入っている程度で、ほとんどの銘柄では閑古鳥が鳴いています。しかし、この特徴を逆手に取ると、割安で現物株を手に入れるチャンスが転がっているのです。今回は、PTS市場を利用するメリットと小技をご紹介します。
PTS市場のメリットとして、証券会社は「忙しいサラリーマンでも取引できる」とか「好きな時間に取引できる」といった謳い文句を並べます。それらはひとまずおいておきましょう。実は、もっと利益に直結するメリットがあるのです。それが「割安の売り注文を探し出してピンポイントで買い付ける方法」です。PTS市場を利用したトレードで利益を出すノウハウがある訳です。夜間取引に生じた、わずかな市場の歪みを狙います。
方法は簡単。いろんな銘柄のPTS板を巡回して安値の売り注文を探し、それにピンポイントで買い注文をぶつければよいのです。もしくは、誰も買い注文を入れていない板を見つけて、日中の株価よりもさらに安値に指し値注文を出しておいてもよいでしょう。他に誰も買い注文を出していないところに成り行き売りの注文が入れば、指値で指定した株価が優先されます。結果、自分に有利な価格で約定させることができます。
先に述べたように、PTS市場の板は大型の銘柄でも閑古鳥が鳴いています。注文は薄く、板にはまばらな売り買いしか入っていません。このため、日中なら隠れて見えないような遠い高値・安値の売り注文が約定してしまうことがあるのです。もしくは、タイミングさえ合えば、次の注文にありえない割安価格で売り注文が控えていることもあります。そんな売り注文を物色して回れば、日中の相場価格よりもさらに安値で買うことができるという訳です。
利益確定も簡単です。翌日の寄り付きで売ればいいのです。通常時間帯の市場では、寄り付き価格が多数の注文で形成されます。前日のPTSの安値などお構いなしに、値を戻すことでしょう。この方法を使うと、小額ですが利益を抜くことができます。
利益は1~2%という所でしょう。期待値は少ないのですが、短期間で利益を出すことができる点が魅力です。
PTS市場の特徴
ノウハウを理解して頂くために、ここでPTS市場の特徴をおさらいしておきましょう。一番の特徴は、取引可能な方法が現物株のみである点でしょうか。残念ながら、信用取引には対応していません。これは、少ない顧客同士での取引しかできないことが理由でしょう。信用取引を取り仕切る日証金は取引に関与していません。
PTSには、以下の通りいくつか特有のルールが存在します。日中の相場と異なる点は、以下3つです。
- 取引は現物株のみ
- 取引時間は19:00~23:59(但しSBI証券のみ夕方の部がある)
- 取り扱い銘柄は東証銘柄のみ(名証・福証は対象外)
建前上は日中の取引とはあまり差異がないように思えます。しかし、実態としては他の要素が絡んで、日中とは全く様相が異なる市場になっています。具体的には以下の特徴を持っています。
- 国内の機関投資家不在(業務時間外)
- 流動性低い(参加者が少ない)
- 海外の機関投資家不在(受け入れる器がない)
- 個人のデイトレーダー不在(値動きがない)
上記の通り、国内の機関投資家が参加していないことを根本的な理由として、ほとんどの取引参加者層が不在の状態です。ほとんどがSBI証券と楽天証券の顧客のみ。それも個人投資家が細々と取引をしているのが現状でしょう。
流動性欠如により値が飛ぶ相場
前述の通り、PTS市場は取引参加者がほとんどいないため、流動性が低い状況が続いています。結果的に相場の不連続性を促す要因となっています。「不連続性」というとややこしい話ですが、簡単に言えば「値が飛ぶ」という話です。ここがノウハウの要所であり、市場に歪みが生じる原因でもあります。
通常、日中の取引では参加者が活発に売買するため、取引板には多くの注文が詰まっています。このため、ストップ高・ストップ安でない限り、細かい刻み幅で株価が推移します。
ところが、参加者が少ないとあまり注文が出されません。結果、価格帯もまばらになります。注文価格がまばらである=値が飛びやすいということです。板を見てみると一目瞭然です。注文がまばらで、まとまった数の成り行き注文なんて出した日には、あっと言う間に板が価格が動いてしまうことが分かります。
このような相場で成り行き注文を入れると、値が飛び、予想外の価格で約定してしまいます。ただ、この成り行きの売り注文を入れた人こそが、安値で売ってくれる人であり、我々の利益と引き替えの犠牲を払ってくれる人です。相場で誰かの損は誰かの利益になります。容赦なくご馳走になりましょう。
逆にPTS市場で株式を買い付けたい場合も、成り行きでの買い注文はタブーです。高値掴みをしてしまうためです。板と睨めっこで指し値注文を入れるのが妥当な方法でしょう。以下の板では誰かが高値掴みをしてしまったこと形跡がありました。
流動性の欠如ゆえに、注文方法にも気を遣います。これもまた、PTS取引の使い勝手を悪くする要因の一つでしょう。今回ご紹介したノウハウがなければ、管理人も興味が薄い制度です。
ストップ高銘柄でもPTSなら買えることも
最後に、PTS市場の王道的なメリットをご紹介しましょう。PTS市場のメジャーなメリットは、日中のストップ高銘柄でも買えることがある点です。
通常、ストップ高で市場が引けると、注文は比例分配制のルールに則って約定します。比例分配制について、少しだけ解説しましょう。
- 比例配分制とは
ストップ高となった場合でも、いくらかの売り注文は存在します。比例分配制とは、その売り注文を証券会社毎に振り分ける方法です。証券各社から出された買いの注文の数に応じた比率で、各社に配分するルールが設けられています。
買い注文を出していた場合、抽選や先着順など、各社のルールに応じて約定するか否かが決まります。大手証券会社を使っていれば、証券会社に振り分けられる配分が多いことは確かですが、その分、他の参加者の買い注文も多いはずです。結果として、配分にありつけるか否かに運の要素が絡んできます。
運の要素を排除するためには、先着順のルールに乗っ取る方法が一番妥当な方法です。その方法の一つがPTS市場に買い注文を入れることです。ストップ高銘柄は、市場が引けた後でも夜間市場にもつれ込んでいることが多々あります。ここに早い段階で注文を入れておけば、先着順の早い位置に並ぶことができます。
特定の銘柄に大きなイベントがあると、ストップ高となっても、さらに株価の伸びを期待することができます。そのような場合、ルールの抜け道としてPTSの存在を頭の片隅に入れておくとよいかも知れません。唯一のPTS取り扱い証券であるSBI証券か楽天証券に口座を持っておくことは、有用な選択肢の一つです。
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