今回は、「決算発表のアノマリー」と銘打って、決算発表前の株式をあらかじめ仕込んでおく手法を紹介します。決算期に有効な先回り買いの手法です。短期で利益が上がり、確度の高い株式トレードをすることができます。
- 業種が同じなら決算も同じ
- 好業績・好決算が続いた例
- 決算予想先回り買いの例
- ポイントと応用例
業種が同じなら決算も同じ
決算発表の3月、9月になると、企業業績の出来不出来に応じて、株価が乱高下します。発表前の決算をあらかじめ知ることができれば、大きく勝つチャンスではあるのです。しかし、合法的な手段で発表前の決算発表を知ることはできません。
もっとも、確度の高い予想をすることは可能です。その一つが、「好業績は伝播する」というアノマリーです。鉄鋼業界なら鉄鋼メーカー、ゴム業界ならゴムメーカー。一つの企業が好業績を発表すると、競合他社も次々と好業績を発表するというアノマリーがあります。
例えば、同じ製薬業界で、競合のA社とB社があるとします。さて、決算発表の時期になって、先にA社の決算発表がありました。そして、営業利益が前期比1.5倍になったと発表されたとします。さて、あなたはどうしますか?
答えは、決算発表前のB社の買いです。
A社が好業績を収めたことには、理由があるはずです。それは、おそらく業界全体の景況がよいからでしょう。ということは、B社は決算発表前ではあるものの、やはり相応の好業績となっていることは容易に想像がつきます。ならば、決算発表が株価に織り込まれる前に、先回りして買いにいこうという趣旨です。
業界全体の景気というのは、連動します。これを利用すれば、決算発表を先回りしての買いを決意することができます。この手法は、簡単なようでいて、案外、あまり知られていません。次の章からは、具体的な例を挙げて説明しましょう。
好業績・好決算が続いた例
具体的な例として筆者の記憶に残るのは、アベノミクス相場であった2013年3月期の期末決算です。円安が進んだおかげで、メーカーが軒並み好業績を収めた年です。
このメーカーの中でも、顕著に業績が向上したのが自動車業界です。もともと、世界的な競争力があるにも関わらず、円高の影響で利益が削られていた状況がありました。それがアベノミクスによる円安によって、どの自動車メーカー・部品メーカーも大幅な利益増加を達成することができました。
例えば、タイヤメーカーです。各メーカーの2013年の連結決算が2014年2月に行われました。国内には、以下のタイヤメーカーが揃っています。
銘柄 | 経常利益(百万) | 前年度比 | 発表日程 |
---|---|---|---|
ブリヂストン(5108) | 434,793 | +52.5% | 2014年2月18日 |
横浜ゴム(5101) | 59,503 | +13.6% | 2014年2月14日 |
東洋ゴム(5105) | 38,293 | +280% | 2014年2月14日 |
これらのタイヤメーカーは、実は決算発表の日程が異なります。一覧にしてみると、どのメーカーも好業績であったことは、今では簡単に理解できます。しかし、連日の発表が始まった直後では、後半の決算発表は知り得ない情報でした。特に、2月14日の時点では、ブリヂストンの決算発表はまだ行われていません。もし、早い段階で決算発表が済んだ横浜ゴムと東洋ゴムの情報をチェックしていれば、後続のブリヂストンの好決算は容易に予想できたのです。
決算予想先回り買いの例
具体的な例を出して、取引のポイントを解説しましょう。ここでは、前述のタイヤメーカーであるブリヂストンと横浜タイヤ、東洋タイヤを例に出しましょう。
これらのメーカーの決算発表日は、以下のように日程が組まれていました。
銘柄 | 経常利益(百万) | 前年度比 | 発表日程 |
---|---|---|---|
東洋ゴム(5105) | 38,293 | +280% | 2014年2月14日(済み) |
横浜ゴム(5101) | 59,503 | +13.6% | 2014年2月14日(済み) |
ブリヂストン(5108) | ??? | ??? | 2014年2月18日(予定) |
最初の決算発表は2月14日の横浜ゴムと東洋ゴムです。決算発表の内容は、上記の通り2桁・3桁増益という快進撃でした。当然、直後に株価は上昇しました。
決算発表を受けて、2社の株価は大幅な上昇。翌週月曜の17日には、多数の買いが入りました。ただし、この時点では、まだブリヂストンの決算は発表されていません。ここがポイントです。
上記の通り、東洋ゴムと横浜ゴムの2社は決算発表を終え、その材料を受けて株価上昇を確認することができました。ここが、買いのチャンスです。ただし、買うのは、後続のブリヂストンです。決算発表を終えた2社は、すでに「材料出尽くし」のリスクを抱えています。
繰り返しになりますが、トレードの根拠は「これからの決算発表で好決算が予想される」ためです。まだ、発表されていない材料ですが、確度の高いトレードをすることができます。同業界の同業他社が先行して好業績を発表しているため、後続のブリヂストンも好業績が期待でるのです。企業固有の損失要因がない限り、容易に決算内容を連想することが可能です。
果たして予想を裏切ることなく、買いを仕込んだ翌日の18日には、ブリヂストンの株価も上昇しました。決算発表前にして、期待から買われたようです。狙っていた通り、決算発表前に買いを仕込んで、利益を出すことができました。
ポイントと応用例
以上、業績発表前の予想買いをする手法をご紹介しました。ポイントを以下にまとめます。
- 同業界内の企業であれば、業績はにかよる傾向がある(決算連動のアノマリー)。
- このため、業績発表の日程で先行する企業が好業績を発表すれば、後続の企業も好業績である可能性が高い。
- そこで、先行企業の好業績と株価上昇を確認したら、後続企業の株を仕込む。
- 見事、株価が上昇したら大成功。デイトレ気味に決済で利益確定。
応用例としては、以下の2点が挙げられます。
- 決算発表でなくとも、業界全体のニュースなら株価が連動しやすい。
- 決算発表は、好業績には限らない。業績悪化の決算発表なら、逆に売りを仕込むチャンスとなる。
今回は、決算発表という例を出して説明しましたが、好業績を予想させるニュースなら、これに限りません。業界全体に波及するようなニュースなら、決算期以外でもイベントが起こり得ます。例えば、業界のリーディングカンパニーが売り上げ目標を上方修正したら、同業他社の売り上げも向上している事態が連想できます。その場合、リーディングカンパニーの株価が、まず先行して上昇し、同業他社がそれに続くという構図が出来上がります。
また、決算発表の内容は、好決算に絞らなくて構いません。業績悪化の内容も表裏一体で、応用が利きます。その場合は、当然、売りの仕込みをする訳です。好業績の場合も、業績悪化の場合も、内容にインパクトがあることが重要です。
株式相場は、3月と9月を中心に決算発表が続きます。この時期は、今回ご紹介した手法で利益を上げる大チャンスです。是非とも、活用してください。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。