3月の年度末決算の時期も終わり、春の季節がやってきました。4月と言えば、新規ポジション建ての季節です。新たな予算が付いた機関投資家が、強気に大きなポジションを取る季節です。3月の新規公募で集めた資金が、そろそろ新たな運用先を求めて動き始める季節でしょう。
今回は、新年度を新たに迎える4月を題材として、そのアノマリーと値動きをご紹介します。これに絡めて、少し機関投資家の運用方法にも触れたいと思います。
例年4月のアノマリー
早速ですが、例年4月の株価指数の値動きを紹介しましょう。ここ10年の日経平均の値動きは以下のグラフのようになっています。ご覧の通り、4月は株価下落の年も下落率が低く、上がった年は上昇率が高いという傾向にあります。
アノマリーの背景にあるのは、邦人投資家による新規ポジション建てでしょう。国内の投資機関の多くは、3月は決算の締め月となっています。対面窓口や営業マンと取引した経験のある方は、3月になって追加投資をセールされた経験があることでしょう。3月は彼らに売り上げノルマがあり、新規顧客や追加投資の売り込みで必死です。
そのようにして集められた資金が、新たに市場に注がれる月が4月です。何かと、新しい物事を始める春の季節。株式相場でも、新規ポジション取りが盛んな時期となっています。
4月中旬は特異点
4月には新規建てが相次ぐ季節だとは言っても、株価が一旦は下がる週があります。第2週~第3週辺りの中盤戦です。
背景には、4月初旬にSQ決済日を通過することがあるのでしょう。SQ決済日は、オプション取引の期限と重なっています。オプション取引の期限日は、日経平均株価などがキリの良い数字(例えば2015年なら20,000円)を目指します。ただ、そこで一服感が漂い、利益確定が相次ぐという訳です。
この下げを狙うのも一つの方法論でしょう。月末にかけて、TOPIX買いや割安感からの買いが入りやすい株価に落ち着きます。中盤に下げた所で、安値を拾うのも一つの方法論でしょうか。短期取引を前提にした場合の戦略です。
機関投資家が長期運用する銘柄
前述の通り、4月は新規建てポジションが相次ぐ季節ですが、個別株で見ると伸びる銘柄は限定的です。というのも、機関投資家が個別の銘柄に長期で投資することは稀であるからです。個別の銘柄に焦点を当てれば、確かに機関投資家の影響力は大きいのですが、市場全体で見ると投入資金の一部に過ぎません。
基本的に、彼らの戦略はパッシブ運用です。翻って、個別銘柄で取り沙汰される機関投資家の影響というのは、アクティブ運用の資金によるものなのです。GPIFのような投資機関で顕著ですが、アクティブ運用の割合というのは、極限られています。詳しくは、以下の記事に記載しました。
参考記事:GPIFに見る
ただ、逆に言えば4月にアクティブ運用が開始された銘柄というものは、長期的に上がっていく期待が持てることも確かです。特定のテーマを持ったファンドに組み入れられれば、継続的に買いが入ることでしょう。そのような銘柄は、まさに4月が仕込み時であると言えます。
銘柄の選別は、難しいところです。ヒントになるのは、四季報に記載される大株主の情報でしょうか。表だって機関投資家が保有を表明することは稀ですが、形を変えてその存在を知ることができます。「日本マスタートラスト銀行」と言ってピンと来る方は、事情通かもしれません。ここら辺の詳しい話は、また今度、記事にしたいと思います。
新規運用と利益確定のサイクル
ここで少し、機関投資家の投資サイクルについてご紹介しましょう。日本でも四半期決算がメジャーになってきた昨今、機関投資家も3ヶ月単位の周期で新規建てと決済を繰り返していると考えます。新規投資が始まるとは言うものの、そのポジションも一定の周期で決済されるという訳です。
この決済の相次ぐ時期が、来月の5月という話です。「セルインメイ」と言えば、アベノミクス以降の相場ではアノマリーとなってきています。その背景には、外資系の決算が相次ぐ時期であることを覚えておきましょう。4半期周期に伴う決算時期が5月の中旬から始まります。
4月に新規に建てられた株式の建て玉ですが、その多くは5月に利益確定の憂き目に逢います。特に先物売買に左右されやすい指数構成銘柄ほど、短期的に処分されることでしょう。TOPIXやJPX225などは、FXのように値頃感から売買されやすい単純な指数であるためです。成長性を考える個別株投資とは切り分けて考えましょう。
まとめ
長々と書いたので、まとめに入りましょう。4月のポイントは以下の通りです。
山高ければ、他に深し。株式は上がれば、落ちるのも早いものです。春の陽気に浮かれて、手放す時期を見失わないように。株式は「鯉のぼりが見えたら売り」という格言を忘れずに。
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