四季報CD-ROMで東証一部昇格銘柄をスクリーニング

四季報CD-ROMで東証一部昇格銘柄をスクリーニング

今回は、四季報CD-ROM版を利用して、東証一部指定の可能性がある銘柄を探す方法をご紹介したいと思います。

東証二部やマザーズ市場から東証一部市場に昇格するためには、特定の条件を満たす必要があります。条件を構成する要素には、株主構成や流動性、あるいは財務諸表、決算内容等が該当します。東京証券取引所により、細則が定められています。

裏を返せば、上記の条件を満たす企業の株式は、東証一部指定を申請する可能性のある銘柄であると言えます。そこで、四季報のスクリーニング機能を利用すると、昇格の可能性がある銘柄が浮き彫りになってきます。

この記事では、四季報のスクリーニングを使って、東証一部昇格候補を探す方法を解説したいと思います。

  1. 四季報CD-ROM版とは
  2. 東証一部指定の条件
  3. スクリーニング機能による絞り込み
  4. 検索結果と改善のポイント
  5. まとめ

四季報CD-ROM版とは

先日、四季報2014年秋号が発売となりました。同時発売されたのが、CDーROM版の四季報です。実は、管理人は初めてCD-ROM版を購入してみました。それまでは元祖書籍版を利用していて、必要なときにぺらぺらとめくっていました。

書籍版では、必要な時に応じて開くという使い方がメインです。この点、CD-ROM版では、若干用途が異なります。それはスクリーニング機能がある点です。スクリーニング機能を使うと、四季報に記載されている情報を元にして、特定の条件に合致する銘柄を洗い出すことができます。スクリーニング条件には、株主数や企業の総資産といった条件を割り当てることも可能です。条件をうまく組み合わせてやれば、東証一部指定の適用条件をスクリーニングする検索条件ができあがるという訳です。

従来の書籍版四季報では、すべてのページをめくるという作業に困難が伴いました。しかし、CD-ROM版のスクリーニング機能を使えば、もう時間を掛けて分厚い冊子を引く必要はありません。多数ある銘柄の中から条件に一致する銘柄を簡単に探し出すことができます。

東証一部指定の条件

スクリーニングの条件式を解説する前に、いまいちど東証一部指定の適用条件をおさらいしましょう。過去記事「東証一部の昇格条件と予想判断の基準」では簡易的な判別方法を解説しましたが、今回は厳密な条件を利用します。詳細な条件は、下記の通りです。東証のHPに公表されています。

  1. 株主数(指定時見込み) 2,200人以上
  2. 流通株式等(指定時見込み)
    1. 流通株式数 2万単位以上
    2. 流通株式時価総額 20億円以上
    3. 流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上
  3. 売買高 申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位以上
  4. 時価総額(指定時見込み) 40億円以上
  5. 純資産の額(指定時見込み) 連結純資産の額が10億円以上
  6. (かつ単体純資産の額が負でないこと)
  7. 利益の額又は時価総額
    (利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)
    次のa又はbのいずれかに適合すること

    1. 最近2年間の経常利益の合計5億円以上
    2. 時価総額が500億円以上
      (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)
  8. 虚偽記載又は不適正意見等
    1. 最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
    2. 最近5年間「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
    3. 次の(a)及び(b)に該当するものでないこと
      • (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載
      • (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載

スクリーニングに利用する情報は、株主数、流動性などの定量的な情報です。四季報に記載されている情報を元にすると、割り出せることができます。

スクリーニング可能な条件は、四季報記載のデータに限ります。企業の決算資料など、記載外の情報は判別できません。また、定性的な情報に関しても、ある程度、人の判断を加える必要があります。このため、上記の一部指定条件のひとつ「決算資料に公正な情報を記載していること」という項目は、今回のスクリーニングの範囲から外しました。銘柄を絞り出したあとに、個々に判断しましょう。もっとも、この条件に反した銘柄は聞いたことがありませんが・・・。

スクリーニング機能による絞り込み

今回の方法論の肝になる条件式をご紹介します。前述の東証一部指定の適用条件をスクリーニングの条件式に落とし込みましょう。条件式は、下記画像の通りになります。

四季報CD-ROMで東証一部指定基準をスクリーニング

四季報CD-ROMで東証一部指定基準をスクリーニング

東証が公表している一部指定基準を数式に置き換え、単位を揃えました。画像だと細かいので、以下に記載します

東証一部指定候補のスクリーニング条件式
  1. 上場区分-含む-東証2部
  2. 上場区分-含む-東証マザーズ
  3. 株主数(人) > 2200
  4. (流通株式数(単位)⇒) 浮動株式数(株)/売買単位(株) > 20,000
  5. (流通株式時価総額(百万円)⇒) 浮動株式数(株)×前日終値/1,000,000 > 2,000
  6. (流通株式比率(%)⇒) 浮動株式数(株)/発行株式数×100 > 35
  7. 時価総額(百万円) > 4,000
  8. 純資産(百万円) > 1,000
  9. 2期前の利益+前期の利益(百万円) > 500
  10. 時価総額(百万円) > 5,000
条件式:
(1 OR 2) AND 3 AND 4 AND 5 AND 6 AND 7 AND 8 AND (9 OR 10)

もっとも、過去の一部指定銘柄でも、上記の条件式全てに合致した銘柄は限られます。上記の条件式は基本形であると思ってください。後述の通り、一部指定候補を予想する際は、いくつか条件に「さじ加減」を加えてやる必要があります。東証一部昇格候補のリストを探してブログを訪れた方には、期待はずれかもしれません。

操作方法については、四季報の出版元である東洋経済が運営するブログに公開されています。四季報CD-ROM版の使い方は、こちらに解説を譲りたいと思います。リンク先のページを参考にしてください。

検索結果と改善のポイント

最後に、2014年9月現在の時点で、上記の手順を行った場合の検索結果と検索のコツをご紹介しましょう。以上の手順でスクリーニングした一部指定の候補銘柄は下記の通りです。スクリーニングの結果、東証一部の昇格候補は計5銘柄となりました。

証券コード社名上場市場
2766日本風力開発東証2部
4623アサヒペン東証2部
9033広島電鉄東証2部
2160GNIグループ東証マザーズ
2489アドウェイズ東証マザーズ

気付かれたでしょうか?東証一部指定候補にしては、この検索結果は数が少なすぎます。この理由は、スクリーニングの条件が厳しすぎるためです。東証一部指定銘柄をウォッチしている方はお分かりでしょう。

実態として、より多くの候補を探し出すためには、検索条件を一部、緩めてやる必要があります。特に、改善するポイントは「流動性」に関する項目です。7つある一部指定基準の中で、4つに関しては、「指定時見込み」という但し書きがついている点がミソです。

  1. 株主数(指定時見込み)
  2. 流通株式等(指定時見込み)
  3. 売買高
  4. 時価総額(指定時見込み)
  5. 純資産の額(指定時見込み)
  6. 利益の額又は時価総額
  7. 虚偽記載又は不適正意見等

この「指定時見込み」の但し書きが付いた項目は、必ずしも一部上場の以前から満たしておく必要はないのです。つまり、一部上場後に売買高が増える見込みがあったり、立ち会い外分売で流動性を向上させたりと、将来的に指定基準をクリアする見通しが立てば良いわけです。

指定時見込みの条件の中でも、最も審査が甘いのは「(2)流動株式等」の項目のようです。というのも、この指定基準をクリアしていなかった多くの銘柄が、過去に一部指定を受けた実績があるためです。おそらく、東証一部に上場すると、必然的に流動性が増える傾向があるので、甘めに審査されているのでしょう。

という訳で、実践的なスクリーニングでは、流動性の条件を緩めて検索をかけてやることがポイントです。より的確な予想をするためには、検索結果を100銘柄まで割り出し、そこから人の判断を加えて指定候補を絞り込んでいく手順が適当だと考えます。スクリーニング外の判断としては、上場後の経過年月や株主増加のための施策の有無、マザーズ銘柄であれば10年ルールの期限等を考慮して、企業が一部指定の申請を出すかどうかを探っていきましょう。ここらへんのさじ加減については、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:サイバーエージェントとマザーズの10年ルール

参考記事:立ち会い外分売の傾向と対策

まとめ

以上の通り、四季報CD-ROM版を使っての東証一部指定候補銘柄のスクリーニングについて、方法をご紹介しました。具体的な銘柄の絞り込みについては、また別途、記事にしたいと思います。管理人が予想する東証一部候補銘柄も一覧にしてみましょうか。

何はともあれ、CD-ROM版を買ってみて、大変便利なことが分かりました。従来の書籍版では時間の掛かっていた指定候補のピックアップが、検索一発で終わるようになったことが効果的です。

四季報CD-ROM版は書籍版に比べてちょっと割高かもしれません。しかし、価格に見合うだけの利便性を備えています。長年、従来版を愛用してきた方も、この記事をきっかけに、CD-ROM版も試してみてはいかがでしょうか。

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